2012年、全国で初めて本格的完全撤去が行われた熊本県の荒瀬ダム。6年かけた工事が2018年に完了した。この撤去によって、川と海が劇的に回復しているという。
荒瀬ダムがあった球磨川では、本来の川の流れを取り戻しつつある。長年、球磨川を見つづけてきた環境カウンセラーの靎詳子さんによると、「まず、水の色が違いますよね。それにカジカガエルというきれいな川にしかいないカエルの鳴き声が聞こえたり、ヤマセミを見たりもするようになりました」と語る。ダムがあった当時の球磨川は、水流が弱く、泥が積み重なっていたため、川の色が透明ではなかった。また、ダム湖は、その堆積した泥のヘドロ化で悪臭まで放っていた。しかし、ダムが撤去されたことで、水質は回復しつつある。
また、泥で隠されていた砂利の河原も出現。さらに、川底にも砂利が増えたことで、そこを住処にする生物も増加し、そして、その生物をエサにする鳥などもやってくるようになり、豊かだった頃の生態系が戻りつつあるという。
その上、川だけでなく海にも変化が。
球磨川河口にある八代海の干潟では、アマモの藻場がダム撤去前の2010年にはほとんど見られなかった。しかし、ダム撤去から6年経った2018年には1.4平方Kmにまで広がったのだ。アマモは小さな魚達の隠れ家や産卵場所になっている重要な海草。今後は、アマモが増えることで、藻場を住処にする魚やエビ、カニなどの増加も期待されている。こうした変化に靎さんは、「人間が手を加えるのをやめたら、川の回復力は私達が想像している以上に大きいなと実感しています」と語る。
山と川と海。それぞれの豊かさが互いに影響し合って、自然が成り立っている。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinくまもと」
協力:熊本朝日放送株式会社