●「海」をテーマにしたポルトガル館──日本と世界を海でつないだ大阪・関西万博
2025年4月から約6か月間にわたって開催されてきた「大阪・関西万博」。“海の万博”と呼ばれた今回は、前編と中編で紐解いてきたように、「海」がひとつの重要なキーワードとなっていました。海は、島国・日本にとって古くから世界とつながる扉。古来より交易や文化交流の場として、人と人、国と国とを結んできました。その「海」を軸に、日本との関係を伝える海外パビリオンがあります。それが、ポルトガル館です。
●ポルトガル館で感じる“海を共有し守る”理念
ポルトガル館のテーマは「海洋:青の対話」。ベルナルド・アマラル館長は「ポルトガルと日本はどうやってつながったかというと海。ポルトガル人は1543年、海から初めて日本にやってきたのです」と、今回「海」をテーマにした理由について解説。そのパビリオンでまず目を引くのが、外観に吊り下げられた数多くのロープ。世界的な建築家・隈研吾さんがデザインを手がけた建物には、約1万本のロープが吊り下がっていて、「波」を表現しているといいます。そして、館内の展示で伝えたいメッセージは「One Ocean for All(ワンオーシャン・フォーオール)」。「海はひとつ。すべての人が海を共有し、守らなければならない」というもの。最初の展示ゾーンでは、まさに「共有」がテーマ。ポルトガルと日本のつながりを歴史や文化の観点から紹介し、また、ポルトガルで行われている海にまつわる取り組みも伝えています。2つ目のゾーンでは、「持続可能な海」について映像を通じて来場者に訴えています。海そのものが語りかけるような映像と音の表現で、来場者はその深いメッセージを受け取っていました。来場者は「日本よりも圧倒的に環境のことを考えていると感心した。日本も海に囲まれている国なので、もうちょっと真剣に意識していかないとと思った」と話しています。アマラル館長は「このパビリオンでは、新たなポルトガルを見せたかった。海を大切にし、持続可能な海についてリーダーシップをとっていることを伝えたかった。日本とのつながりはできたので、これからもこの関係を長く続けていきたい」と、パビリオンに込めた思いと今後の展望を語っています。
●次世代へ語り継がれていくだろう「海の万博」──豊かな海を未来へ
大阪・関西万博を象徴する大屋根リングに、“BLUE OCEAN DOME”やポルトガル館などのパビリオンで表現されていたように、日本と世界が「海」を通じてつながった今回の万博。この「海の万博」を見て体験した人々が、次世代に豊かな海を引き継いでくれるはずです。