●温暖化対策で注目のキーワード「ブルーカーボン」──テクノロジーで取り組むBlueArch
近年、温暖化が世界的な問題となっている中、にわかに注目を集めているのが「ブルーカーボン」です。ブルーカーボンとは、海藻(海草)などの光合成によって吸収され、海の中に長期間蓄積される炭素のこと。そのブルーカーボンを、水中ドローンなどを活用して計測する方法を開発しているのが、一般社団法人「BlueArch(ブルーアーチ)」です。
●特許技術で海の保全をもっと身近に──水中ドローンでブルーカーボン調査
「ロボットやAIの開発を自社で行っていて、藻場の調査からブルーカーボンクレジットの支援まで、一気通貫で行っているところが一番の特徴」と話すのは、BlueArchの代表理事・武藤素輝さん(27)。「ブルーカーボンクレジット」とは、ブルーカーボンを数値化し、排出権(クレジット)として取引できるようにしたもの。制度化もされており、気候変動対策のひとつとして期待されています。ただ、この制度を利用するために必要なのが、ブルーカーボン生態系の実地調査です。海藻などが茂る藻場の密度などを把握することが欠かせません。武藤さんによると「調査のやり方としては、人が潜って行う手法が一般的だった」とのこと。しかし、コストの問題や身体的負担が大きいといった課題がありました。そこで、BlueArchは日本財団や神奈川県の支援を受け、船の上から水中ドローンを使って手軽に調査できる手法を開発。これにより、有人潜水調査の負担を大幅に軽減。2025年2月には、この技術で特許も取得しました。
●GPSで「自動航行」する水中ドローン!BlueArchが開発する次世代の海洋調査技術
しかし、依然として課題だったのが、ブルーカーボンクレジットの申請に関わる「正確な位置情報の取得」。武藤さんは「既存の操縦型の水中ドローンだと、なかなか精度の高い位置情報が取得できないという課題がある」と説明。そこで、いま力を入れているのが、GPSを活用した自律航行の開発です。「操縦熟練度に依存しない方法。例えば、漁師の方など、誰でも藻場調査ができる世界を目指している」と武藤さんが展望を話しているように、実現に向けて現在は試験航行を繰り返しています。神奈川県の漁港でテストしたこの日は、実際にGPSで指定したポイントまで、操縦なしで水中ドローンが移動していました。
●誰もが海の環境保全に取り組める仕組みづくりに挑戦中!
BlueArchでは、この技術を完成させ、漁業者をはじめ、誰もが海の環境保全に取り組めるようにしたいと言います。「そもそも海の環境そのものが変わってきているという課題を、どうにかできないかと考えたのが出発点です。複雑な制度やモニタリングなど大変な作業が伴うところだが、これをテクノロジーの力で簡易化させる。誰もがブルーカーボンについて調査を行い、クレジットの申請をし、(海の環境保全の)活動の資金が得られるような仕組みをつくっていきたい」
テクノロジーの力で海の未来を変えようとしているBlueArchの挑戦に注目です。