鹿児島県阿久根市の名物のひとつが、ウニ。粒うに、うにみそ、うに醤など、様々な商品がつくられ、特産品として多くの人々に味わわれている。
そんな阿久根市で大量のウニがとれている。
しかし、この大量のウニ、実は厄介ものだという。その理由のひとつが、磯焼け。鹿児島大学・大学院連合農学研究科の寺田竜太教授によると、磯焼けとは、「海の中には、コンブやワカメ、ヒジキのような海藻類の大群落「藻場」があるんですけれども、その藻場が様々な原因によって消失、そして、それが持続すること」だという。藻場は、様々な生き物たちの隠れ家や住処、産卵場、稚魚などの保育場であり、さらに、魚や貝などのエサにもなる大切な存在。しかし、その藻場が無くなる磯焼けが起こっているのだ。
その磯焼けの原因のひとつが、ウニの増加。「海藻を食べるウニが増加することで、海藻がより減ってしまうという現象が起きています」と寺田教授は語る。実際に、2015年に撮影された阿久根の沿岸部では、海面や岩場に海藻が生えているのが確認できる。しかし、2018年には、全くと言っていいほど海藻が確認できない。
さらに、磯焼けが起きた海域のウニには商品価値がないという。寺田教授によると、「磯焼けが起きた海域のウニは、エサが少ないものですから、身入りが悪く、磯焼けの海域にウニがたくさんあるからといって、我々の資源にもならない」と語る。
そんなウニが増えてしまった理由は、生態系のバランスが崩れてしまったからだという。もともとは、漁業者が適度にウニを漁獲することで、海藻と海藻を食べるウニのバランスが保たれていたという。しかし、最近は漁業者の数も減少。また、温暖化の影響もあって、ウニが増加傾向にあるそう。
そこで、増え過ぎたウニを駆除するという対策を実施。その結果、効果も現れている。ウニの駆除という磯焼け対策を行ったエリアでは藻場が復活しているのだ。阿久根市の黒之浜地区ではこのウニ駆除を平成20年から行っている。ただ、莫大な費用がかかるなど、まだ問題は山積み。
そんな中、新たな対策に取り組む地元の水産会社もある。それが、尾塚水産。対策として行っているのは、ウニ殻を焼成して微粉末にしたウニ殻のカルシウムをつくるというもの。このカルシウムを使って、お菓子や石鹸を開発し、駆除したウニを再利用しているのだ。ちなみに、尾塚水産は、その活動が評価され、地球温暖化対策に取り組む企業として数々の賞を受賞している。
海と密接に結びついている私達。
そのバランスを保つために、的確なかじ取りが求められている。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトin鹿児島」
協力:株式会社南日本放送