神奈川県鎌倉市の材木座海岸で海のそなえ体験イベント「海ロデオ」が、7月31日から8月2日まで行われました。子ども達はオリジナル遊びの「海ロデオ」のほかに、シュノーケリングやウインドサーフィン、沖まで漕ぎ出すアウトリガーカヌーなど、海を楽しむための様々なアクティビティを体験。磯を満喫する海洋生物観察会では、驚きの発見もありました。それが、サザナミフグ。NPOパパラギ“海と自然の教室”ダイビングインストラクターの工藤佑介さんによると「沖縄の方のフグですね。材木座海岸で見たのは初めてです」とのこと。子ども達は、このようなアクティビティから普段の生活では経験できない海の楽しい思い出をつくりました。
その一方で、単純に遊ぶだけでなく、海での「そなえ」も体験。
子どもたち全員がライフジャケットを着用、そして、クラゲ除けのクリームもしっかりと塗り、また、各アクティビティのインストラクターからも「そなえ」の重要性を繰り返し教わりました。実は、子どもだけでも海での事故で毎年30人ほどが亡くなっているそうで、海には危険も多くあります。そのため、このイベントでは、「知識」「行動」「装備」という3つの「そなえ」について、アクティビティを通じて楽しみながら学んでもらったのです。
そんな海の危険は、様々なところに潜んでいるそう。そこで、海の「危険」と「そなえ」について、インストラクターの方に教えてもらいました。
まずは、海にいる危険生物。
工藤さんは「これから秋にかけて水温が一番高くなるので、台風とか黒潮に乗って危険生物が漂着してくることがある」と言います。そんな危険生物について、磯で遊ぶ際に注意すべきものは「ひとつは、貝の一種の“フジツボ”。くちばしがあるので手で触ると簡単に切れてしまい、血だらけになっちゃったりするので、見つけても触らないようにだけお願い致します。また、魚だと“ゴンズイ”。ゴンズイ玉と言われたりするんですけど、群れになって集団で動いていることが多いです。そのゴンズイのヒレとかには毒があり、触ると刺されて腫れちゃったりするので、気をつけてもらえればなと思います。あとは、“ヒョウモンダコ”。小さいタイプのタコで、岩の表面などに擬態していたりするため見つけにくいですが、怒り出すと全身に青い線の紋様が出始めます。こうなったら絶対に触らないようにしてください。くちばしの部分に強めの毒を持っていて噛まれたりするので」と工藤さんは言います。
さらに、沖の危険生物については「一番メジャーなのが、クラゲ。アンドンクラゲとかカツオノエボシとかアカクラゲなどですね。例えば、カツオノエボシは、透明な水色で凄くキレイなのですが、キレイだと思って触ると刺されます。また、死んだと思っても毒はあるので触らないように」と工藤さんは注意しています。
そして、もし危険生物に被害を受けた場合についても、注意が必要だそう。「まずは一緒に来ている親御さんなどに報告する。インストラクターとかライフセーバーがいる場合には真っ先に伝えてください。自己判断で間違った対処をしてしまうと逆効果になる場合もありますので。例えば、クラゲは種類によって刺され方とか対処の仕方が変わってきますし」と、海の危険生物とそなえについて工藤さんが教えてくれました。
さらに、海での危険は生き物だけではありません。日本ライフセービング協会のインストラクター・林亮太さんは「特に気をつけて頂きたいのが、“離岸流”と呼ばれるものですね」と言います。沖に向かって凄いスピードで流れる離岸流は、年に数回海に来るという人には見分けにくいところがありますが、その離岸流によって溺れが発生するというのが、毎年非常に多いとのこと。
そんな離岸流の見分け方があるそうで、「特に注意すべきなのが、海藻やごみといった浮遊物が沖に向かって筋をのばすように流れている時。その場所や近くで離岸流が発生している可能性が非常に高くなります」と林さんは言います。また、離岸流が無いように見えても注意する必要があるそう。「ヨコの流れが発生しているところでは、最終的に、同じく反対側からヨコに向かって流れてくるところがあり、そのぶつかったところから沖に流れる離岸流が発生するポイントになります」とのこと。
さらに、海に来た時には、ライフセーバー・ライフガードに離岸流について聞いておくといいと言います。「潮の満ち引き、干潮の時間や満潮の時間によって、離岸流の発生する場所、発生する時の幅の広さなどが変化します。そのため、我々ライフセーバー・ライフガードに、ひと声かけて頂ければ『今日はこういうところで気をつけて遊んでください』とか『今日の海のコンディションはこうなっていますよ』というのをお伝えさせて頂きます」とのこと。
そして、海の危険に対する「そなえ」も必要です。そのひとつが、ライフジャケット。林さんは「ボードの上からジャンプをしてみたり、シュノーケリングをしてみたりする中で、ライフジャケットを着ることによって、まずは浮くことが出来ます。そのため、泳ぎが苦手な子でも海に来るのが初めての子でも、安心して遊んで頂けるのが、ひとつの利点になると思います」と言います。
その他にも、もしも危険な状態に陥ってしまった時の「そなえ」も重要です。
例えば、もしも沖に流されてしまった時については「まずは絶対に慌てないということ。パニックになってしまうと、どうしてもその先に溺れてしまうという結果が待っていますので、まずは慌てずに。そして、もしライフジャケットやビーチボールなどの自分の体を浮かせるものがある場合は、それにしっかり掴まって頂いて、浮くということを大切に」と林さんは言います。さらに、「我々ライフセーバー・ライフガードは、海から岸に向かって手を振っている方というのは、もしかしたら助けを求めてるんじゃないかなという“助けてサイン”という認識をしています。そのため、もし流されてしまった時には、岸に向かって大きく手を振って頂ければ、ライフセーバー・ライフガードが皆さんのところに駆けつけます」と、沖に流されてしまった時の「助けてサイン」を覚えておくといいと言います。
また、もし溺れてしまった場合は「まず落ち着いて、大きく息を吸い込んで頂くと、体の中に空気の袋が出来ますので、その状態で仰向けになって浮いて待って頂くことが非常に大切になります。ライフセーバー・ライフガードがいる海水浴場ですと、空を向いて全く動かないという遊泳者の方は、もしかしたら自分で泳ぐことが出来ないのかもしれないなと思い、声を掛けにいくというケースが非常に多いです」と、浮いて仰向けに待つことが重要だと林さんは言います。
そして、もしも人が溺れていたのを見た場合は「まずは、その方に対して声を掛けて頂く。『私はあなたを発見しましたよ、大丈夫ですか、今助けを呼びますからね』という声かけをして頂くことによって、溺れてしまった方に、もうすぐ助けが来るんだなということを認識させてあげるというのが大切になってきます。そして、その方がいなくならないように、ずっと見続けて頂くことも大切です」と林さんは言います。その一方で、注意点としては「無理に助けにいってしまうと、自分自身が溺れてしまう可能性もあります。ですので、ライフセーバー・ライフガードに声を掛けてください。私どもの方で救助に向かいますので」とのこと。溺れている人を見つけた場合は、声をかける、その人を見続ける、ライフセーバー・ライフガードを呼ぶという3つが重要だそう。
そんな「海のそなえ」について、海のそなえソーシャルアクションプロジェクト実行委員会事務局の小川恭子さんは「まずは親御さん自身が海とはどういう場所なのかをきちんと分かって海で過ごして頂きたいと思っています。それからライフジャケットなど命を救うものを、きちんと着けて頂きたいです。そして、子ども達は、親御さんの目の離れたところで行動しないように、親御さんはお子さんから決して目を離さずに行動して頂きたいです」と言います。
これから迎える夏本番。
海での楽しい思い出づくりのために、「危険」と「そなえ」を知ることが大切です。