海なし県である滋賀県。
その滋賀県の朽木地区では、なぜか鯖が郷土料理となっている。その理由は、歴史的背景にあるという。
古代、福井県の若狭は、朝廷に食料を献上する御食国のひとつだった。「京は遠ても十八理」と言われ、若狭の海で獲れた魚介類は70km以上も離れた京の都へと運ばれた。そのひとつが、鯖。江戸時代になると、たくさんの鯖が運ばれるようになり、その街道は鯖街道と呼ばれるようになった。その鯖街道は若狭を出発して、滋賀県高島市朽木を通り、京都へと続く。若狭の鯖は滋賀県の朽木を通っていたのだ。
そのため、鯖街道沿いの朽木周辺の家庭では、昔から鯖がよく用いられる。丸八百貨店の山本悦子さんは、「ここに来たらあんまり川魚があまりなくて、山の中で海の魚ばっかり食べるなって思っていました」と、初めて朽木を訪れた時のエピソードを語るほど。このような歴史的背景から朽木では、「鯖のなれずし」と「鯖ずし」が名物となっているのだ。
元朽木村史編集委員長の石田敏さんは、「朽木は、琵琶湖沿岸の暮らしとはちょっと食文化も違っていて朽木独特。これは全て若狭湾を通じてもたらされた海産物を、山里でもとれるものと融合させた独特の食事なんです」とその背景を語る。また、石田さんは、「ここで育った子ども達が自分達の故郷の歴史を知って、また、都会に出たとしても、故郷である朽木を誇りに思って欲しい」と、朽木独特の食文化から分かる歴史と街についての想いを語っている。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトin滋賀県」
協力:びわ湖放送株式会社