2018年7月7日、日本財団は、海で起きている水難事故について、衝撃的な分析結果を発表。「(水難事故で)毎年1000人近くの方々が亡くなっております。その内、大体7割、700名が海で命を落としています」と、海野光行常務理事が話した。日本財団は、海上保安庁や警察庁、ライフセービング協会の水辺の事故のデータをまとめ、分析。その結果、様々なことがわかってきたという。そのひとつが、海での事故が多いこと。過去5年間を平均すると、子どもだけでも毎年30人ほどが亡くなっている。また、海での遊泳中の死亡事故のほとんどが、特に危険とは見なされにくい状況、海が晴れていたり、複数人で行動したり、遊泳可能な海水浴場などで起きているのだ。
このような結果から、日本財団は海で安全に楽しく過ごせるよう、ある取り組みを始めるという。海野理事は「(海で安全に楽しく過ごす)そのための肝というのは、やはり、“そなえ”だと思います」と話す。水難事故を防ぐために、事前に知識や対応策などを知っておく“そなえ”を提案し、普及活動を行っていくという。
その一環として、この日、発表と同時に専門家たちによる講演も実施。一般社団法人 土木研究センターなぎさ総合研究所の所長・宇多高明さんによると、「ひとつの指標として、(砂浜を)裸足で歩けばよくわかる。かたいところというのは大体が安心して遊べる場所」だという。ただ、その一方で、「4分か5分に1回は、静かな波のところでもザーっと(大きな波が)来る」と警鐘も鳴らした。このように、専門家たちは参加した親へ向けて、備えるべき知識を伝えた。
さらに、子ども達は、マイライフジャケット・スクールに参加。このイベントは、そなえの重要性について子ども達に楽しく学んでもらうもの。実は、そなえの中でも、ライフジャケットの着用は特に重要だという。海野理事によると、「事故にあった人の9割がライフジャケットを装着していなかった」という。実際に、ライフジャケットを着用していないと、着用している時に比べ生存率が5割ほども下がってしまうのだ。そのため、スクールでは、子ども達に、ライフジャケットをプレゼント。そして、実際に着用を体験してもらった。
そんなライフジャケットの着用には、大事なことがあるという。講演をしたグローブライド株式会社フィッシング営業本部プロモーション課の吉川隆さんによると、「ライフジャケットには股にベルトが1つ、ないしは2つ付いていますので、これを必ず締めることが重要です」と話す。股のベルトを締めないと、外れてしまい、着用者とライフジャケットが別の方向に流されてしまう可能性もあるのだそう。
そして、スクールでは、着用体験の他に、親しみが持てるよう、ライフジャケット用のバッグに飾りつけを行ったり絵を描いたりした。
このイベントに参加した子どもは、「海で楽しくライフジャケットを着て泳ぎたいです」と学んだ感想を話し、また、その親は「水着を着る=ライフジャケットを着るという世の中になればいいなって感じました」と話す。
海野理事は発表の際、「ライフジャケットを危険だからと強制的に着させるという時代から、出来れば自発的に子ども達が着用したくなるようにマインドセットを変えていく。自転車にヘルメットのように海にはライフジャケットと、(ライフジャケットが)一般的になってくれるといいなと思います」と今後の展望を語った。
これから迎える夏本番。
海へと遊びに行く機会が多くなるが、事故に遭わないための“そなえ”が重要となる。