福岡県の宗像市。
その宗像の海では、竹でつくった小魚の住処“竹漁礁”が、海と山を豊かにしている。
もともと宗像市の鐘崎漁港は、海女発祥の地と言われ、かつて、アワビをはじめ、イカやアジ、フグなど豊富な魚が獲れていた。しかし、漁獲量は年々減少。1991年は45億2,000万円あった水揚げ高が、今では3分の1近くにまで減っている。宗像漁協組合の代表理事組合長・中村忠彦さんによると、「沿岸で商売をしている人は、商売がしにくくなっていて、生活が出来ないような深刻な状態になっています」と嘆く。
そこで、豊かな海を取り戻すために、地元の福岡県立水産高等学校の先生と生徒たちが取り組んでいるのが、竹の伐採。
その理由は、豊かな海の源として重要な広葉樹林を守るため。広葉樹林の森では、木々から葉っぱが落ち、それを微生物が分解。その分解したものの中には、栄養素も含まれていて、雨が降ると、地面の中にしみ出て、最終的には海へと流れていく。そうして、山からの栄養で海藻が育ち、そこに小魚が集まり、小魚を食べにやってきた魚が卵を産む。このように、山の広葉樹林と海とは密接に繋がっている。
しかし、竹は成長が早く、広葉樹林の成長を邪魔してしまう。また、根が浅いため、水を保水しにくかったり葉が栄養になりにくかったりと、竹が多くあると様々な要因から山が栄養を蓄えられない。
そこで、生徒たちは、海の再生プロジェクトのため、1,350本、33トンもの竹を伐採。さらに、伐採した竹を使って、小魚の住処「竹漁礁」をつくっているのだ。2017年には、このプロジェクトに地元の漁師も参加。10基の竹漁礁を鐘崎漁港沖500mの場所に設置した。
実際に、竹漁礁は効果があり、沈めた場所が魚の産卵場所、そして、小魚の住処になっている。
竹を伐採し有効利用することで、山の環境を整え、海をも豊かにしている。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinふくおか」
協力:RKB毎日放送株式会社