生態系

アサリの復活に使ったのは下水の泥!

かつては多くのアサリが獲れていた有明海。
しかし、今この干潟からアサリが消えつつある。

水環境を専門に研究している福岡大学の渡辺教授によると、「昭和が終わる前後ぐらいから急激に獲れなくなっています」と語る。実際に、1983年にはおよそ10万トンも獲れていたが、2012年にはほとんど獲れなくなってしまった。

その原因は、ヘドロ。
有明海には、アサリの子どもである稚貝が多く浮遊している。しかし、ヘドロにくっつくと、呼吸がしにくくなったり、エサが食べられなくなったりし、成長しなくなってしまう。そんなヘドロは、海の汚れや海岸工事、赤潮の発生など、様々なことが原因で有明海に広がっているという。

そこで、アサリを救おうと、2015年の夏から渡辺教授と学生たちが活動を開始。アサリの再生プロジェクトに取り組んでいる。その取り組みが、ヘドロの分解。そのために使用したのが、フルボ酸鉄シリカ。水質を浄化してくれる物質となっている。渡辺教授の研究によると、フルボ酸鉄シリカが、ヘドロを分解しキレイな泥にしてくれるという。しかも、この物質は、なんと下水の泥からつくれている。そのフルボ酸鉄シリカをおもしと一緒に袋に入れ、5m間隔で干潟に設置した。その数は、なんと50袋以上。

すると、その効果は絶大。
ヘドロでぬかるみ、歩けないほどだった干潟が、わずか2か月でキレイな姿へと戻った。さらに、ほとんど生息していなかったアサリも見事に再生したのだ。

しかも、貝が戻ってきたことで、干潟に相乗効果まで生まれるという。渡辺教授によると、「貝が戻ってきて循環が始まると、実は何もしなくても、ずっと(干潟が)イイ状態に保たれていく可能性はあります」と語る。

人間が少し手助けする事で、かつての自然が戻るかも知れないと話す渡辺教授。今こそそんな知恵が必要とされている。

素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinふくおか」
協力:RKB毎日放送株式会社

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