長崎県の伊王島に国内最大となる洋上風力人材育成センターが誕生し、その開所式が2024年11月7日に行われました。
脱炭素社会への実現に向けて、切り札とされているのが洋上風力発電。全国各地で建設が進む中、人材の育成が急務となっています。現在、この分野の人材は5,000人ほどですが、2030年には1万6,000人が必要となり、今世紀半ばにはその数が5万人に達すると見込まれています。そこで、日本財団は海洋開発分野の人材育成を推進する「オーシャンイノベーションプロジェクト」の一環として、企画や設計などを行う「技術者」を育成できる「長崎海洋開発人材育成・フィールドセンター(愛称:長崎海洋アカデミー)」を2020年に設立。そして、今回は建設やメンテナンスなどを担当する「技能者」を育成する「日本財団洋上風力人材育成センター」を開所しました。
開所式を迎えたこの日、さまざまな関係者が列席。長崎県の馬場裕子副知事は「海洋産業人材の育成施設がここ長崎に誕生するということは、新たな基幹産業として海洋エネルギー産業の拠点形成を目指す本県にとっても非常に大きな意味を持つ」とセンターの意義について話しました。そして、開所式後には、完成した「安全訓練棟」を公開し、訓練のデモンストレーションを実施。プールを使い、万が一海へ入水することになった場合の対応や救命イカダに乗り込む方法などを実演。また、高所からの救助訓練の様子もメディアに公開されました。ここでの訓練は、日英両言語に対応し、風力発電に関する国際非営利組織である「GWO(国際風力機関)」の認証も取得していて、年間1,000人ほどの育成が可能になるそう。さらに、2026年3月には「技能訓練棟」が建設され、2027年3月には洋上訓練が可能となる施設も完成予定です。日本財団洋上風力人材育成センター・松尾博志施設長は「地域社会にとっては雇用が生まれるということが非常に大事。洋上風車は長崎に現場があるじゃないかと、そこで自分の能力とか知識を活かしたいというUターンの若い方たちが増えるひとつの受け皿になると思う」と語っています。また、日本財団の海野光行常務理事は「洋上風力発電は裾野の広い産業だと思っている。海以外の異分野の人たちが参入できる分野だと思うので、造船とか海事関係、船舶関係以外の技術を持った人々がどんどん参入しやすくなると思うので、その辺は期待をしたい」と今後の展望について述べました。