都内で日本財団 無人運航船プロジェクトMEGURI2040無人運航船セミナーが、2023年7月20日に行われました。
無人運航船とは、船内のほぼ全ての作業をAIなどが担当し、無人で運航する船のこと。今回のセミナーを開催した日本財団は、2020年に無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」を発足。2022年には第1ステージとして、世界初となる事例も含む5つの実証実験を成功させました。
今回のセミナーでは、無人運航船に関わる技術、政策などについての最新情報の発信とMEGURI2040の第2ステージについての発表を実施。セミナー前半の情報発信では、ゲストとして参加したロイドレジスター・ジャパン株式会社 カスタマーサクセス・エグゼクティブ・パートナーのルイス・ベニートさんが登壇。ロイドレジスターは、世界の船級協会の先駆けとなったイギリスの団体。ベニートさんは「韓国、シンガポール、ノルウェー、フィンランド、イギリス、これらの国々で無人運航船の実証実験が行われていますが、研究開発の最前線は大型船。こうした世界の開発競争の中で、MEGURI2040の実績は際立っている」など、無人運航船における世界の動向や標準化に向けたロードマップなどが提示されました。また、さまざまな分野の専門家によるパネルディスカッションも行われ、近郵船舶管理株式会社 三等航海士の金子辰典さんは「無人運航船の実用化で最も期待しているところは、作業負荷が軽減されること。例えば、航海当直をAIに任せることができれば、同じ時間でほかの作業ができると思う」と現場目線での意見を語りました。また、自動運転バスを展開しているBOLDLY株式会社 代表取締役社長 兼 CEOの佐治友基さんは「国で技術やマーケットを保護し過ぎると、逆にガラパゴスになり、後から海外に輸出できない、ヨーロッパに規格でリードされるといったことになりかねない。政府、有識者、民間が組み合った時に、日本のマーケットでつくられたものが、海外にも展開できることが大事だと思う」と自動運転バスを実用化した経験からの提言を行いました。
そして、セミナー後半では、MEGURI2040の第2ステージについて発表されました。船舶や海運はもちろん、通信、商社に至るまで多種多様な51社で推進し、社会実装に踏み出します。その中で行われる実証実験では、「大型貨物船による最長9カ月の実証実験、陸上支援センターによる複数船舶の遠隔支援が、世界初の要素となる」と日本財団の海野光行常務理事が発表。そして、無人運航船仕様の船を新たに建造するほか、既存の船も活用します。プロジェクトディレクターを務める桑原悟さんは「社会実装を進めていくには、新造船だけでは成り立たない。そこで、既存船における普及の方法をいかに考えていくかが重要になる」と、その理由について語っています。また、災害時にも備えるため、移動型の陸上支援センターも設置する予定など、さまざまな試みを行うことが明かされました。MEGURI2040の今後について、桑原さんは「例えば山手線では、自動で走っている車両がある。そのことに気づいていない人もいるかもしれないが、無人運航船の社会実装も同じでいいと思っている。特別なものではいけないと思っているので、使いやすいものを、ニーズをとらえた上で、こそっと入れていく世界がつくれればよいのではないか」と展望を語っています。海野常務理事は「私たちが無人運航船に乗ったり、操縦できたりする場面はもう少し先。無人運航船は今の子どもたちが恩恵を受ける。そこで、その子どもたちに夢を育んでもらうための事業もやっていきたい」と話しています。そして、日本財団の笹川陽平会長は「ルールづくりまで日本が主導してやっていくだけの環境ができている。プロジェクトをぜひとも成功してもらいたい」と述べています。