東京海洋大学マリンサイエンスミュージアムにて、「コククジラの骨格標本 展示開始式」が、2023年12月1日に開催されました。このイベントは日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
2016年3月、南房総市内の防波堤に、体長9メートルほどのクジラの死がいが漂着。調査の結果、絶滅が危惧されているコククジラの子どもと判明し、標本をつくるために解体され、海岸の砂浜に埋められていました。その後、7年の月日を経て、標本化プロジェクトが本格始動。今年1月には「掘り起こしと3Dスキャン」が行われました。
そして、遂に標本が完成し、展示開始式が行われたのです。コククジラの骨格標本はとても希少価値が高いそうで、クジラの専門家で東京海洋大学・海洋環境科学部門の中村玄助教は「国内外問わず、コククジラの骨格標本は非常に少ない」と言います。また、クジラの形に組み立てずに展示した理由について、「研究者は骨の裏や厚さを測りたいが、組まれてしまうと観察ができないので、バラバラの状態の方が研究価値として高い」と説明。一方で、3Dスキャンしたデータを使い、全体がわかる「玉骨標本」も出力しました。これらの標本化に協力したのが、海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクトの研究生です。このプロジェクトは、最新の3D技術を学びながら海洋生物の研究を行うもので、標本化プロジェクトも活動の一環として、研究生が発掘と3Dスキャンに協力しました。展示開始式に参加した1期生の栗山奈月さんは「展示されて感無量です。自分が手伝ったものが多くの方に見てもらえると思うとワクワクします」と嬉しそうでした。また、杉本拓哉さんは「発掘した時は慌ただしくて、骨などをよく見られなかったので、今からゆっくり見ようと思います」と楽しみにしている様子。さらに、今年度に入学した3期生も展示式に参加していて、中島明香莉さんは「生で見れて貴重な経験になりました」と話し、萩原竜誠さんは「調べたい魚について3D技術を活用して伝えていきたいので、今回の展示方法は今後に生かせると思います」と参考になったようです。プロジェクトの主任講師で吉本アートファクトリー代表の吉本大輝さんは「学生のうちから3Dデータに触れたりして編集できるようになれば、違う分野に進んでも、3Dだったらこんな風に解決できると提案できる、いわば僕の仲間が育っていくと思う」と取り組みの意義を語っています。日本財団 海洋事業部 海洋環境チームの坂根朱華里さんは「海の課題も社会課題も、ひとつの問題として切り取ることができない。海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクトは、多面的に捉えられる力を養えるので、その力を生かして世の中に役立て欲しい」と、研究生にに期待していると言います。
今回展示された標本は、東京海洋大学マリンサイエンスミュージアムにて無料で観覧できます。