東京と京都で、学生たちが運営しトップシェフがサポートするポップアップレストランが、2023年8月11日から19日までオープンしました。これは、日本財団「海と日本プロジェクト」の活動の一環として、「Chefs for the Blue」が行ったプログラムの集大成です。
Chefs for the Blueとはトップシェフが集まった団体で、東京と京都にチームがあり、合わせて40人以上で構成。代表理事を務める佐々木ひろこさんが「影響力のあるシェフ達が集まって、海の未来を考えようという趣旨でさまざまな活動を行っている」と話すように、海と食をテーマに啓発活動や商品開発などを行っています。
彼らが始めたのが、学生と一緒に海の未来を考える「THE BLUE CAMP」。このプログラムは、東京と京都で実施。選考された学生たち16人が、Chefs for the Blueに参加している一流シェフの伴走のもと、海と食に関する座学、漁場でのフィールドワーク、レストランでの研修を経て、最終的に“店舗経営の全てを行うポップアップレストラン”をオープンするというものです。佐々木さんは「これまでさまざまな活動をしてきたが、対象は大人だった。未来の海と一緒に生きていく世代である若者と一緒に、何かプロジェクトを動かしてみたいという想いが長くあった」とキッカケについて語っています。
6月に行われた東京チームのフィールドワークでは、静岡県で定置網漁業を見学。定置網は、魚の入網を「待つ」漁法。獲りすぎないだけでなく、網目の大きさを調整し、稚魚などを獲らないよう心がけていることを学びました。そのほかにも、スズキ漁を行っている漁師などからサステナブルな漁業について学習するなど、海の現場で携わる人の想いを肌で感じました。
そして、東京チームがレストランをオープンする日まで約1週間。この日は、レストラン研修が行われました。参加した小山卯月さんと藤野佑一朗さんが、ミシュラン一つ星を持つフレンチの名店「sincere(シンシア)」で、石井真介シェフの指導のもと、ポップアップレストランで提供するブダイの三枚おろしやラグーパスタづくりなどを行いました。ブダイは、多くの地域では食用として活用されていない“未利用魚”。一方で、魚の住処やエサとなる海藻が激減する「磯焼け」の原因にもなっている魚でもあります。また、ラグーソースに使われているバショウカジキやメジナなどは、一般に流通が少ない“低活用魚”。座学や漁場でのフィールドワークで知り、学んだ内容をメニューに生かしているのです。試作品を食べたふたりは「魚の食感が残っていておいしい」と大満足の様子。実はこのふたり、年恰好は同じでも全く違うフィールドからやってきました。小山さんは調理専門学校の学生で料理人を目指していて、藤野さんは東京大学農学部で生態学を学んでいます。普通に生活していたら、交わる機会はなかったかもしれません。THE BLUE CAMPのコーディネーター・須賀智子さんは「多様なメンバーで組んで、海の現状を伝える。そのために大きな問題を自分たちが解けるサイズに問いを立てて、解決策を導き出すことに、彼らはとても心を砕いてきた」と、その成長に目を細めていました。
そして、東京チームの1期生8人は、さまざまな学びと準備を経て、いよいよ3カ月間の集大成となるポップアップレストランの開店へ。
(後編に続く)