都内で「LOCAL FISH CAN グランプリ2023」が、10月8日に開催されました。この大会は、全国の高校生が獲っても売れなかったり、食害をひき起こしたりする地域の「課題魚」を食材にして、オリジナルの缶詰を開発するというもの。2021年から日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として行われています。今年度は57のチームから応募があったそうです。
この日は、決勝大会。選抜された9チームが出場し、地域の海と魚の課題、開発してきた缶詰などについてプレゼンしました。その結果、「地域巻き込み賞」とコミュニティサイトでの活動と発信力を表彰する「缶カツ賞」のダブル受賞となったのが、熊本県立天草拓心高等学校です。芝居形式も取り入れたプレゼンの中で、「5年前、地元の漁師さんから『キビナゴが獲れすぎて困っている。何とか加工してくれ』と依頼を受け、味付け缶詰を開発しました」と発表したように、この高校は以前から缶詰開発を実施していました。今回の大会では、アサリの食害問題を引き起こしている魚の“キチヌ”を使って、中華あんかけ缶詰を開発。「あんかけをつくる時に、とろみをつけるために片栗粉を入れましたが、おいしく食べやすいものをつくるために、濃度が何%がベストかをこだわりました。12月にはグランメッセ熊本で販売会を実施するので、そこで色んな人にチヌのことを知ってもらいたいです。また、将来的には宇宙食にもできたら」と語っています。そして、最優秀賞に輝いたのは、愛媛県立長浜高等学校です。この学校には水族館があり、生徒が世話と運営を実施。毎月第3土曜日には一般公開も行っていて、人気のイベントは「ハマチの輪くぐりショー」だそう。ハマチは出世魚で大きくなるとブリと名前を変えますが、この学校が大会でテーマとしたのが、ゆかりのある「ブリ」。愛媛県ではブリの養殖が全国3位となっていて、食用として利用されていない「ブリの中落ち」を使い、缶詰を開発しました。実はこのチームは、昨年も同じテーマで出場し、「ブリの骨が少し硬い」という指摘を受け、受賞とはなりませんでした。そこで、今年こそはとリベンジに燃えていたのです。今大会では、試行錯誤の結果、酢を使って骨を柔らかくすることに成功し、見事グランプリを獲得しました。長浜高校は「協力してくれた缶詰会社にも『骨を除いたら楽なんだけどね』と言われましたが、骨が入っているのが私達のアイデンティティでもあるし、おいしいと感じていたので、諦めずに模索してよかったと思います」と振り返っています。今後は災害備蓄品として、地元の大洲市に提案するそうです。審査員を務めた缶詰博士の黒川勇人さんは「今回の大会で強く思ったのは、昨年の大会で審査員から『この部分をこうした方がおいしくなる』といったアドバイスを素直に受け入れて、今回の開発に生かしてくる学校が多かった。そういう生徒を見ると、将来どの業種・業態に進んでも、この体験を活かしてきちんとした仕事ができると思う」と語っています。また、同じく審査員を務めた日本財団 海洋事業部 海洋環境チームの西井諒さんは「『シンクグローバル・アクトローカル』という言葉があるように、例えば、ブリの中骨が捨てられているのは愛媛だけではない、アイゴの被害に苦しんでいるのは岡山だけではないというように、ローカルに対するアクションはその地域のみで終わらせず、もっと視野を広めて、色んな共同体と協力しながら、どう広めていくかを考えて欲しい」とエールを送っています。
決勝大会に進出した9チームの缶詰は、東京都世田谷区の二子玉川ライズで開催されるイベント「海のごちそうフェスティバル2023」にて、販売される予定です。