海の体験機会づくり

9カ月育てたヒラメを「いただきます」~東京・足立区の小学校で海の魚を育てる「陸養プロジェクト」~

東京・足立区にある弘道小学校で、約9カ月育ててきたヒラメを食べる授業が、2022年6月3日に行われました。これは、小学校で海の魚を養殖し、子ども達に海の恵みと命の大切さを考えてもらう「陸養プロジェクト」のプログラムのひとつです。陸養プロジェクトは日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として行われています。

2021年9月、ヒラメの稚魚を受け入れた5年生の児童たち。エサやりや水槽の掃除などのお世話を担当することになりました。児童のひとりは「小さいと聞いていたけど、意外と大きいなと思いました。みんなで心を込めて育てていきたいです」と意気込んでいました。「陸養プロジェクト」では、魚を育てるだけではなく、最後には「食べるか」「食べないか」を議論。そして、子ども達自身が出した結論を実行します。みんなで育てていきたいと話していた児童は「すごく悩むけど、僕的には海に逃がしてあげたい」とヒラメを食べないと語っています。

そして、2022年6月、6年生となった児童たちに「議論の日」がやってきました。ある児童は「5年生から責任を持って育ててきたので、このまま逃がさずに食べたい」と話し、一方で別の児童は「海に逃がしてもっと大きく成長させてあげたいから食べない方がいいと思う」と話すなど、お互いに自分の考えをぶつけ合いました。陸養プロジェクトで講師を務めるNPO日本養殖振興会(カリキュラム監修・水槽考案)の代表・齊藤浩一さんは「自分たちで育ててきたからこそ、みんながヒラメの命をどうするかをしっかりと考えないといけない」と話します。そして、話し合いの結果、育てたヒラメを「食べる」と決めました。逃がしてあげたいと言っていた児童も、最後は「食べる」を選択し、「9カ月間ヒラメを育ててきて、段々と責任感がわいてきた。しっかり感謝しながら明日は食べたいと思いました」と語っています。齊藤さんは「食べるという選択がすべて良いということではなく、人間だから持つ気持ちの大切さも教えていきたい。子ども達に一番わかってもらいたいのは、命と向き合って感謝が必要だということ」と語っています。

翌日、いよいよ育ててきたヒラメを食べる日。ヒラメを〆る際、齊藤さんが「見られる人はしっかりと命と向き合ってください。さあここからは手を合わせていきましょう」と言うと、子ども達は手を合わせ、それぞれの想いを胸にヒラメがさばかれる様子を見届けました。そして、食べる前に「食べられなくてもダメではありません。食べてあげることも生きるためには必要です。最後の最後は自分で判断してください」と齊藤さんが話し、食べられる児童は感謝をしながらヒラメをいただきました。食べた児童は「ヒラメを食べてみて美味しかったから、味を忘れないようにしたい」と話しています。この9カ月、子ども達の成長を見守っていた担任の吉澤洸瑠教諭は「やはり育てていく中で、愛着があったりカワイイという声があったので、食べるのどうしようかなという疑問の声はありました。食べる・食べないという正解のない授業なので、子ども達の考えや意見が深まった授業なのかなと思います」と振り返っています。命の授業を通じて、さまざまな葛藤を経験した子ども達の心に、陸養プロジェクトが残したものは何だったのでしょうか。当初は逃がしてあげたいと考え、最終的には「食べる」を選択した児童は「命の大切さとか食に対する考え方が変わりました。ヒラメを育てる前までは考えたことがなかったけど、いろんな人が獲ってくれたり、いろんな人が作ってくれたりしてる食だと、最近ではちょっとは考えられるようになりました」と語っています。ヒラメだけでなく、育てていた子ども達自身も大きく立派に成長していました。

素材提供:株式会社テレビ東京

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