神奈川県の由比ガ浜海水浴場。
ここには、見慣れない旗が掲げられています。これは、国際環境認証ブルーフラッグです。ブルーフラッグは、国際団体「FEE」が運営し、「水質」や「ビーチ利用者への環境教育活動」といった33の厳しい基準をクリアした一流のビーチなどに与えられるいわば「海業界のミシュラン」です。現在、日本では、わずか4カ所だけが認定を受けていて、由比ガ浜は2016年にアジアで初めて獲得しました。NPO法人 湘南ビジョン研究所の理事長・片山清宏さんは「由比ガ浜がブルーフラッグを承認されたということは、世界基準でのキレイな海、安全な海、誰でも利用できる海、これが客観的に証明されたという成果だと思う」と語っています。
ただ、その一方で、深刻な海離れも起こっています。神奈川県の海水浴客は、年々減少傾向で、2012年は685万人だったのが、2018年は半分ほどの375万人になっています(神奈川県の各市町村から報告された数を集計)。また、日本財団の調査によると、海に親しみを感じていない若者は約4割にも及んでいます。その原因について、「海が汚いから」、「海水浴場で飲酒とかが出来なくなったり、規制が厳しくなっている」、「津波とかもあったので、それで海が怖くなっているのかなと思う」などと、海水浴客は様々な要因があると感じているようです。
そんな中、ブルーフラッグをアピールすることが、海離れを防ぎ、さらに、より良い街づくりにも繋がると言います。片山さんは「海離れが起こっているという現状で、ブルーフラッグの取り組みを知り、海に関わるキッカケが増え、またみんなが海に来てくれて海の良さや楽しさを知ってもらえれば、持続可能な街づくりに繋がっていくのかなと思う」と語っています。
そこで、毎年審査のあるブルーフラッグを継続して取得するため、由比ガ浜では、「バリアフリー対応」や「水質調査」、「指定洗剤の使用」といった様々な取り組みを行っています。さらに、由比ガ浜独自の取り組みもあると言います。由比ガ浜茶亭組合の組合長・増田元秀さんは「独自の取り組みは、恐らく車椅子の方でも散策できるユニバーサルボードウォーク。他のビーチでも一部ユニバーサル化しているところはあるかもしれないが、由比ガ浜は海岸800mにボードウォークを設置しているので、車椅子の方だけではなく、健常者の方も歩きやすい」と話します。これらの取り組みの結果、由比ガ浜はブルーフラッグを4年連続で取得し続けています。
さらに、2019年12月には、国内4都市のブルーフラッグビーチの取得事例の発表など、「ブルーフラッグ」をテーマにした日本初のシンポジウム「BLUE FLAG Japan サミット 2019 in 鎌倉~海を守り、未来をつくる~」を開催しました。このシンポジウムは継続開催されるそうで、2020年は高浜町で開催予定です。そして、今後について、片山さんは「このブルーフラッグを日本全国に広げていきたいと思っている。この由比ガ浜で、海を守る活動のモデルをつくって、それを日本全国に知ってもらって、日本の海をより良くしていくことに繋げられればなと思う」と語っています。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinかながわ」
協力:株式会社テレビ神奈川