生態系

広島県の名物・牡蠣を救うかも!?海を耕す海底耕耘

広島県の名物といえば、牡蠣。
しかし、その牡蠣に問題が起こったという。

広島県は世界有数の牡蠣の養殖地で、国内生産量は6割以上を占める。そんな牡蠣の養殖は、天然の牡蠣の幼生(子ども)を、ホタテの貝殻につけて、2~3年ほど育てた後に出荷する。しかし、2017年、広島湾全体で牡蠣の幼生が必要とされる数の3割ほどしか取れなかった。これによって、出荷される2年後、3年後に牡蠣の供給が十分ではなくなる可能性が生じる。そこで現在は次の年にとれた幼生を早く育てる努力をしている。

この異常事態が起こった原因のひとつが、エサ不足。広島大学生物生産学部の小池一彦教授によると、「昔、瀬戸内海は富栄養化が著しくて、かつては死の海と呼ばれていましたけど、最近、努力の甲斐あってキレイになってきました。ただ、キレイになったため、植物プランクトンがあまり出現しないということになっています」と話す。牡蠣の幼生は、ある程度大きくなって初めてホタテ貝に付着する。その大きくなるためのエサとなるのが、植物プランクトン瀬戸内海は昔に比べてキレイになったが、その一方で、植物プランクトンを育てる窒素などの栄養素が減少。そのため、植物プランクトンが減ってしまったのだという。

そこで、その対策として行われたのが、海底耕耘。海底には、植物プランクトンの種が眠っている。しかし、光が当たらないと発芽しない。そこで、船で海底を耕すことによって種を水深が浅いところに上げ、光を当てさせ、発芽させるのだ。その海底耕耘は2018年6月に3日間実施。すると、その翌日には、植物プランクトンが、なんと3倍から5倍ほどに増加。さらに、2018年はホタテ貝に付着する牡蠣の幼生数も、2017年の300倍以上に増えたのだ。

ただ、海底耕耘と幼生が増えた因果関係は、研究中のため、現時点では不明だそう。また、植物プランクトンの中には、増殖することで赤潮を引き起こすものもいる。そのため、地道な水質調査を続け、海底耕耘をする場所や時期などを特定していく必要があるという。小池教授は、「キレイな海から豊かな海へ、いいバランスの海を取れるような海にしていきたいと思っています」と、今後の抱負を語った。

素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトin広島」

ad_pc_805

関連記事

  1. 伝統文化

    荒々しくも神々しい神輿を川へ突き落す愛媛県の北条秋祭り

    愛媛県・北条で行われる北条秋祭り。このお祭りは、古くから行…

  2. 海の体験機会づくり

    自分達で遊び・学んで地元の海を次の世代へと繋ぐ「阿蘇海の日」

    京都府の与謝野町と宮津市にまたがる阿蘇海。ここは、日本三景のひ…

おすすめ記事

  1. 海の生態系を支えるアマモの復活

最近の記事

  1. 石破首相も登壇!日本で初開催の「ワールド・オーシャン・サミッ…
  2. 「灯台×観光」など全国で進む新たな利活用~「海と灯台プロジェ…
  3. 高校生がサンゴの猛毒を研究!抗がん剤開発にも意欲!~「マリン…
  4. 世界初!能登半島地震の前後で起こった海と陸の地形変化を完全可…
  5. 漁業支援の革新:AI技術、クロダイ活用、ヒトデで地域活性化を…
PAGE TOP