●超一流料理人たちが政府に日本の魚について提言!
持続可能な海と食をテーマに活動を続けているシェフの団体「Chefs for the Blue(シェフス フォー ザ ブルー)」が、2025年6月2日、森健水産庁長官と小泉進次郎農林水産大臣に提言書を提出しました。
●サバが激減し高級魚に。魚食大国・日本が水産資源危機
森水産庁長官への提出後に行われた記者発表で代表理事の佐々木ひろこさんは、日本の水産資源が激減し、多くの飲食店が深刻な危機感を抱いていると背景について説明。特にサバなどの主要魚種は、未成魚の乱獲や資源管理の不十分さなどから状況がさらに悪化していて、価格高騰や市場での流通量の激減を招いていると言います。また、漁獲量の減少が飲食業にどんな影響を与えているかを明らかにするため、業界初の試みとして全国の飲食事業者を対象にアンケート調査も実施し、その結果も発表。多くの飲食店が魚介類の仕入れが困難だと回答し、さらに、約90%のお店が魚の流通量の減少、価格上昇を実感していることが判明。こういった危機的な現状から、提言書では資源調査・管理予算の大幅な拡充と、科学的な資源管理策の導入を強く求めたと言います。
●料理界の第一人者たちが悲鳴!「魚が手に入らない」
また、この日 同席したトップシェフたちも、日本料理の根幹である魚介類が国内消費を満たせぬまま海外への輸出が増加している点について問題視し、各々が感じている資源の逼迫について訴えました。ミシュラン三ツ星レストラン「カンテサンス」のオーナーシェフ・岸田周三さんは「食材の確保が困難で、特にアワビやイセエビのような高級食材が入手しにくくなった」、Chefs for the Blue京都チーム発起人で「cenci(チェンチ)」の坂本健さんは「サバの質・量ともに悪化し、使用が困難になった」、「アジア50ベストレストラン」にランクインした「茶禅華(さぜんか)」の川田智也さんは「干しアワビなど中国料理の重要食材も激減、高騰している」、すしの名店「日本橋蛎殻町 すぎた」の杉田孝明さんは「江戸前寿司に欠かせないコハダが特に入手困難」、人気日本料理店「てのしま」の林亮平さんは「瀬戸内の貝類や昆布など重要食材が著しく減少している」と危機感をあらわにしました。また、一般消費者にも水産資源の持続可能性を意識してほしいと呼びかけました。
●トップシェフたちが小泉農水相にぶつけた食の現場のリアル
そして、記者発表後には小泉農水相へも提言書を提出。その際、杉田さんは「僕らは魚がないと仕事ができないので、本当に大切なものです。ここ何年も魚が減っているのは明らかで、市場に行っても“高い”のもそうだが、“いない”、“使えない”が現実」と魚が獲れなくなっている現状について、最新のデータとともに訴えました。それに対して、大臣就任前は自民党の水産総合調査会長でもあった小泉農水相は「水産や漁業の現状に大変な危機感をお持ちだというみなさんの声をしっかりと受け止めて、農林水産大臣としてもしっかりと資源評価・調査・研究に予算をつけていきたい」と応え、今後、国として水産業の再興に尽力すると約束しました。
●古米について小泉大臣が求めたプロの声
一方、話題の備蓄米に関して、小泉大臣から「例えば、お寿司屋さんだったら、もともと古米を使っていたとか、それぞれの料理分野でこういった古米の使い方をしていたなど、(備蓄米などに関して)受け止めがあれば聞かせて欲しい」と逆質問をする場面も。杉田さんは「水分量が多い新米と比べると、(古米は)味が入る、お酢が中までちゃんと入っていく」などとすし職人としての意見を伝えていました。提言書を受け取った小泉大臣は「大変な危機感を持って水産業の強靭化に向けた政策を強化しなければならない。私が大臣になる前から調査会長として行っていたが、大臣としても実現に向けて全力を尽くしたい」と語りました。