近年深刻な問題となっているのが、海ごみ。
その海ごみの量は、この数十年で増え続けていて、その大半はプラスチック。このままだと、海に蓄積されるプラスチックの量は、今後10年で10倍から25倍となり、1億トンを超えると言われている。そんなプラスチックごみは、海洋環境だけでなく、人体への影響も懸念されている。
そこで、2019年2月18日、日本財団と環境省が、海ごみの対策に向けた共同プロジェクトを開始することを発表した。記者会見で原田義昭環境大臣は、「海洋環境の保全に向けた気運をさらに盛り上げるために、海と日本プロジェクトを始め、海洋ごみ削減に関するプロジェクトの実績が非常に豊富な日本財団と連携して取り組むことに致しました」と連携の意図を語った。日本財団の笹川陽平会長は、「日本が海洋ごみの処理についての先進国だというモデルをぜひ環境省と共につくりたい」と抱負を述べた。
そんなこの共同プロジェクトが立ち上がったのは、日本財団と環境省それぞれの取り組みが背景にある。もともと日本財団は、「海と日本プロジェクト」を基盤として、海ごみの問題に産官学民が取り組む「CHANGE FOR THE BLUE」を2018年11月から実施。基盤となっている「海と日本プロジェクト」は、2018年、7000もの団体が日本財団と共に活動し、150万人が参加。一方で、環境省では、海洋プラスチック問題の解決に向けた取り組みとして、使い捨てプラスチック製品の使用削減や分別回収の徹底など、“プラスチックとの賢い付き合い方”を全国的に推進し、取り組みを国内外に発信する「Plastics Smart」キャンペーンを2018年10月から実施している。そのそれぞれの取り組みが、海ごみ・海洋プラスチック問題の解決に向け、連携することとなったのだ。日本財団の海野光行常務理事は、「日本財団が持つ実行力、そして、環境省が持つ全国へのネットワーク、この2つを掛け合わせてこのプロジェクトを実行していきたいと考えています」と語った。
具体的な共同事業は、「海ごみゼロウィーク」、「海ごみゼロアワード」、「海ごみゼロ国際シンポジウム」の3つ。
まず、「海ごみゼロウィーク」は、5月30日(ごみゼロの日)から6月5日(環境の日)を経て、6月8日(世界海洋デー)前後の期間を「海ごみゼロウィーク」と設定。そして、海洋ごみ削減に向けた全国一斉清掃活動への参加を、全国の個人、団体、企業、自治体等に広く呼びかけ、ごみ拾い活動などを行うというもの。3年間で述べ240万人のプロジェクトの参加を目指しているという。また、海ごみゼロウィークのWEBサイトを2019年3月の上旬に公開予定で、このWEBサイトに活動の様子など様々な情報を集約していきながら、活動を可視化していくとのこと。
次に、「海ごみゼロアワード」は、海ごみに関して、全国から優れた取り組みを募集し表彰するというもの。「アクション部門」、「イノベーション部門」、「アイディア部門」の3部門を設定し、地方自治体や企業、個人まで、あらゆる人・団体から海ごみへの取り組みを募集し、各部門と最優秀賞・審査員特別賞について表彰を行う。表彰された取り組みについては、最大で100万円の奨励金も贈呈されるという。
そして、「海ごみゼロ国際シンポジウム」は、日本を中心に海洋プラスチックごみ対策における企業・団体の優れた取組や学術研究の成果などを、一般公開のもとで紹介し、問題の解決に向けた日本の取り組みを国内外に発信するというもの。このシンポジウムでは、「海ごみゼロアワード」の表彰式も行われる予定。
そんな3つの事業の背景には、海洋ごみ問題が取り上げられる見込みとなっている2019年6月に日本で開催される「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」がある。そのため、日本財団と環境省のこの共同プロジェクトは、日本だけでなく、世界に向けた壮大な取り組みになるという。日本財団の笹川会長は、「環境省と共に、海ごみゼロ運動を展開することによって、G20を始め、閣僚会議においても、日本が率先してモデルケースをつくりたいと思っています」と目標を語り、原田環境大臣も、「我が国の取り組みを国内外に発信し、海洋プラスチック問題の解決に向けて、リーダーシップを発揮していきたい」と語った。