伊勢湾に春を告げる魚、コウナゴ。
三重県では、釜揚げなどで古くから親しまれてきた。
しかし、コウナゴが伊勢湾から消えてしまった。
三重県水産研究所などが行った稚魚の分布調査によると、伊勢湾内のどの場所でも結果はゼロ。1匹の稚魚さえいないのだ。コウナゴ漁師は、「2016年と続けてコウナゴがいないのは初めて」と話す。また、別のコウナゴ漁師・黒田一成さんは「年間の水揚の3割はコウナゴで賄っているので、2年連続ないとなるとかなりの痛手」と話すように、漁業関係者の生活を圧迫しているという。
そんなコウナゴがいなくなった原因には、温暖化の可能性があると考えられている。伊勢湾の海水温は、年平均0.03℃ずつ上昇。これがコウナゴに影響を与えているという。三重大学 水産実験所長の木村清志教授によると、「コウナゴは水温が上がってくると、海底の砂の中で、夏に眠る夏眠(かみん)をする。その時の水温が25度を超えていると、生き残る確率が下がるという報告があります。夏眠をする場所というのは伊勢湾口の付近で、そこは9月が最高温度になりますが、近年では23度から25度ぐらいまで上がっていて、それがひとつ大きな原因ではないかと考えています」と話す。
しかし、復活する可能性もあるのだという。木村教授によると、「コウナゴは、この種類の中では最も南にいる魚。だから、恐らく氷河期の時に、伊勢湾の海域に降りてきて瀬戸内海、伊勢湾とかに取り残されたんだと思います。そのため、高い水温に弱い遺伝子を持つコウナゴはいなくなっていき、今残っているものは高い水温に強い遺伝子を持ったものだとすると、それが今後も増える可能性があります」と話す。もともとコウナゴは、冷たい海に住んでいたという。そして、伊勢湾のコウナゴは、温暖な環境に順応してきたと考えられている。
そこで、漁師たちは、2016年から3年連続の禁漁を決めた。黒田さんは、「まあ、戻ってくるまで待たないと仕方がないね」と語る。
コウナゴの復活を願う漁師たち。かつてのようにコウナゴは戻ってくるのだろうか。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトin三重県」
協力:三重テレビ放送株式会社