兵庫県姫路市の的形潮干狩り場で行われているのが、春から夏にかけて出来る海辺の楽しみのひとつ、潮干狩り。
しかし、瀬戸内海ではアサリが激減。1980年代は、多い時に1000トンを超える量が獲れていた。ところが、近年は5トンを下回るほどに。その理由は、いくつかの要因が考えられるという。例えば、アサリなどの二枚貝を食べるナルトビエイによる食害。もともと兵庫県にはおらず、山口県などに生息していたが、食べるものが無くなり出現したと言われている。また、海の水質を改善した結果、エサとなる植物プランクトンが減少したという。高度経済成長期、海の水質が悪化。生活排水と産業排水によって海に窒素やリンなどが多くなり、それらをエサとする植物プランクトンは赤潮が発生するほど増加していた。その後、下水道の整備や排水規制などにより、水質は改善。しかし、今度は逆に窒素やリンが少なくなり、植物プランクトンも減少してしまったという。その他にも、住処である干潟が台風によって減ってしまったなど、様々な要因により、アサリは激減してしまった。
そんなほぼいなくなってしまったアサリだが、実は、海にとって大切な存在だという。水産技術センター増殖部の主席研究員・安信秀樹さんは、「瀬戸内海は今、すごく栄養が無い状態なので、アサリなどの二枚貝は非常に大事な生物として扱われています」と話す。アサリは植物プランクトンを、海に必要な栄養をつくっている。この栄養は、他の生物のエサとなっているのだという。
そこで、西播磨地区では、天然のアサリを獲り過ぎないようにしつつ、漁獲量を増やそうという取り組みが行われている。そのひとつが、垂下式の養殖。これは、コンテナに砂を詰め、その中にアサリの赤ちゃんを入れて育てる。さらに、コンテナには食害を防ぐために網をかけ、そして、海の底ではなく、イカダを浮かべて水深2~3mに沈めるというもの。こうすることで、エサとなる植物プランクトンが多い場所で育てられるのだ。室津漁業協同組合の磯部公一さんによると、「天然のアサリと養殖のアサリと比べたら、同じ海域でも全然身入りが違う。この養殖の方がよく肥えるアサリが出来る」と話すように、この方法だと、1年で4cmを超える立派なアサリに成長。毎年春には出荷が出来るそう。今は、沖合いだと波が早く、コンテナ内の砂が流れてしまう恐れがあり、この養殖方法は湾内だけだが、今後は、沖合いでも出来る方法を考えている。
私達のためにも、海のためにも、アサリを増やす努力が続けられている。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinひょうご」
協力:株式会社 サンテレビジョン