フグの本場・山口県。
今、ここで異変が起きている。それが、雑種フグの増加。しかも、大規模に起こっているという。実際に、2012年から2014年にかけて採取された種類が不明なフグ252体を、水産大学校がDNA調査した結果、149体が雑種だった。そして、増えているのは、食用のゴマフグとショウサイフグの雑種だという。この雑種フグ、一見、同じに見えるが、恐ろしいのが、毒の部位が不明なこと。そのため、現在の基準では食べられない。
そんな雑種が増えた理由として考えられているのが、地球温暖化だという。もともと、ゴマフグは日本海側、ショウサイフグは太平洋側と生息域は分かれていた。しかし、海水温が上昇し、ゴマフグの生息域が津軽海峡を越えて、太平洋側にも広がってしまった。そこで交配が進み、雑種が増えたと考えられている。水産大学校の高橋洋准教授によると、「日本海は地球温暖化の影響を早く受けている温暖化のペースの早い海域なんです。それと同じように、アフリカの南西岸も地球温暖化のペースが早い。そのアフリカでも交雑が報告されています。恐らくそういった温暖化のペースが早いところで、魚が温暖化によって分布域を変えていき、交雑が起きているのではないかと考えています」と話す
そんな雑種が増えたことが、漁業関係者にとって問題となっている。山口県下関にある水産加工業者では、仕分けで雑種が次々と見つかっている。その雑種にも色々あり、ゴマフグに比べ、模様がハッキリしていないもの、ショウサイフグに似ているが、ショウサイフグとは違い、尾ビレが黄色なものなど、様々な雑種がいるという。さらに、ベテランの仕分け人でも悩むものも。純粋なゴマフグは背中と腹部を触ると小さなトゲがある。一方で、姿かたちは同じ雑種でも、腹部を触るとトゲがないものがいるのだ。水産加工業者の蟹屋では、10分ほどの仕分けで、雑種を疑うフグが13匹も見つかった。工場長の栗本和彦さんは、「フグを扱う以上、選別は必要だと思う。間違ったものは出せないんで」と話す。そして、見つけた雑種のフグは、全て廃棄されている。
また、他の漁業関係者でも、消費者の安心・安全のため、対策が行われている。フグの取扱量で日本一の南風泊市場では、生産者と市場で二重のチェック体制をとり、雑種は一切流通させていない。
さらに、フグの研究を行っている水産大学校では、研究を進め、雑種のデータベースを構築し、判別システムの開発を目指している。
海の環境変化によって起きている危険なフグの異変。漁業関係者が目を光らせ、私達の食卓を守っている。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinやまぐち」
協力:山口放送株式会社