日本財団が推進している「海と日本プロジェクト」は、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくために、2016年から全国各地で様々な活動を行っています。「海と日本プロジェクト in いしかわ」(石川県)では、海に携わる人への取材、奥能登の海と恵みを泊まり込みで学ぶツアー、海を学ぶオンラインイベントなどを実施しています。「海の学びや海で起きている問題点といった要素を必ず盛り込むようにしている」と話すのは、海と日本プロジェクトin石川県実行委員会を率いる石川テレビ放送の奧名恭明さんです。奥名さんは取材を通じて“あること”に気づいたそうで、「『能登小木港 イカす会』を2016年5月下旬に取材した際、小木小学校の児童たちがイカの解剖を行っていた。海は、おいしい、楽しいだけじゃないと、海プロの最初の取材で思い知らされた」と言います。能登町にある小木小学校は、全国でここだけだという海洋教育・里海科で、海に携わる様々な人達を招き、授業を行っています。「海と日本プロジェクト in いしかわ」では、その里海科をモデルとして、活動の中に「海の学び」を組み込んでいるのです。「海プロの活動を通じて、海の問題の見方が変わっていくのを感じている。海はただ楽しいだけではない、それが石川県での活動の根幹」と奥名さんは語っています。
その活動に大きな影響を与えた1人が、能登里海教育研究所の主幹研究員・浦田慎さんです。この研究所は、小木小学校の里海科カリキュラムを支援するために、2015年から活動を開始。「里海教育とは、海の仕組みについて興味を持って調べようではなく、人間が海にどう関わっているかという人間の暮らしやこれからの未来、人間生活のあり方まで含めた教育カリキュラム」と話す浦田さんは現在、小木小学校だけではなく、能登町を中心に、様々な形で海の学びをサポートしています。そして、最も力を入れているのが、海洋ごみ問題です。「子ども達が大人になった時、彼らが海洋ごみ問題解決のための力になってもらわないといけない。そのための教育活動・教育支援活動は一番優先されるものだと思っている。その活動では、子ども達を連れて海岸へごみ拾いに行くといった内容は、基本的に行っていない。海洋ごみ問題の本質は、例えば、プラスチックがなぜ問題なのかというように、それぞれメカニズムがある。そのため、仕組みを理解して、リスクを評価し、新たな解決策をつくれる、そういう人材が20年後に出てこないといけない」と活動の意義について語っています。そこで、学校に協力してもらい、社会の授業の一環として海洋ごみ問題が学べるように、地理の授業の後、海洋ごみの漂流・漂着を予測できるシミュレーターを使った学習などを行っているそうです。
浦田さんは今後について、「海洋教育の一環として『PCRとウイルスの不思議』という講演を2019年に行ったように、新しいバイオテクノロジーのテクニックなどは積極的に海洋教育に取り入れていきたい。また、海沿いじゃない学校に、海洋教育の魅力や価値を伝えていくことも積極的にやっていければと思っている」と、海の学びを深めていきたいと話しています。
また、「海と日本プロジェクト in いしかわ」も、海の学びを広めていきたいと言います。奥名さんは「例えば、石川県で唯一の鍛冶屋「ふくべ鍛冶」は、色んな刃物をつくっているが、オーダーメイドの漁具もつくっているように、石川県には海との繋がりを持った方が大勢いる。その方達を子ども達に会わせるというように、ネットワーク・人脈を活用して多彩な海洋教育を海プロの活動としてやりたい」と、今後の抱負を語っています。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinいしかわ」
協力:石川テレビ放送株式会社