水族館は日本全国に100カ所以上もあり、国土面積あたりの数にすると世界一とも言われています。各地の水族館では展示以外にも重要なお仕事が。それが飼育・研究です。
長崎県にある「長崎ペンギン水族館」には、9種類180羽以上のペンギンが暮らしています。その飼育種類数は世界一で、世界に生息する18種類の半分が見られます。そのペンギンたちの健康を守るために、この水族館では「長崎方式」という独自の飼育方法を行っています。「冬場は外に出して日光に当てた方がペンギンたちのためになるのではないかと考えた。そこで、朝はペンギンたちを歩かせて屋外飼育場へ連れていく。そして、夜の閉館する際にも歩かせて飼育場に戻す。こうしてペンギンたちが歩くことが運動になる」と田﨑智館長は説明。土日祝日に開催されている「ふれあいペンギンビーチ」でも、歩かせるようにエサをあげるなど、イベントでもペンギンが歩くような内容を積極的に行っています。こういった取り組みによって健康状態を良好に保つことが、繁殖の成功にも繋がると言います。その繁殖でもこの水族館では、さまざまな取り組みを実施。そのひとつが「受精卵移動」です。ペンギンも人間と同じで、血縁が近くなることで遺伝的な病気のリスクが上がります。そこで、長崎ペンギン水族館では、それを避けるためにほかの水族館などと連携。受精卵を空輸してこの水族館で孵化させる「受精卵移動」などに取り組んでいるのです。田﨑館長は「今後もこのような取り組みで、国内のペンギンたちの遺伝的多様性を保っていきたい。また、繁殖をしっかりしてペンギンたちを未来の人々につなげていけるように頑張りたい」と語っています。
独自の飼育方法を行っているのは鹿児島県にもあります。それが、800種1万点を飼育展示する「いおワールド かごしま水族館」。ここの人気者が、大きいものだと18メートル以上にもなる世界最大の魚「ジンベエザメ」です。この水族館にいるのは、10代目の「ユウユウ」。実は歴代のユウユウ全てが、鹿児島の海で定置網にかかったものだと言います。展示課の土田洋之さんは「鹿児島県では春から秋の海水温があたたかい時期に、ジンベエザメが沿岸近くまでやってくることが漁業者の間では知られている。ただ、多くの方には知られていないと思う」と言います。そのジンベエザメの飼育・展示について、この水族館では「かごしま方式」という独自のルールで行っています。土田さんは「成長すると最大18メートル以上になるジンベエザメを水族館でずっと飼育し続けることはできない。そこで、全長5.5メートルを上限として、再び海に帰す方法で継続展示を行っている」と説明。そして、海に戻す際には、飼育技術の向上や生態の解明に貢献しようと、発信機やカメラなどをつけての追跡調査も行っています。「元気な姿で再び海に帰すことによって、野生資源に負担をかけない、野生の数を減らさない、そういった展示方法です」と土田さんは話しています。いま展示されている10代目ユウユウも2024年か2025年頃に海へと帰す予定だそう。海に帰る前に会いに行ってみてはいかがでしょう。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinながさき」 「海と日本プロジェクトin鹿児島」
協力:テレビ長崎 南日本放送