今、海に異変が起きています。各地で魚の住処やエサとなる海藻が激減する「磯焼け」が起こっているのです。そこで、海の砂漠化とも言われる磯焼けを解決しようと、各地で取り組みが始まっています。
富山県で行われているのが、ウニの駆除。ウニが海藻を食べてしまっているのです。しかも、ウニを割ってみると実がスカスカの状態。これは、エサである海藻がないため、実入りが悪くなる。すると、売れないため捕獲しなくなります。その結果、ウニが大量発生し、また海藻がなくなるといった悪循環に陥っているのだそう。そこで、泊漁業協同組合では、素潜り愛好家などとウニを回収する取り組みを開始。泊漁業協同組合の太田光紀さんは「市民参加型で関心を持ってもらって、人海戦術でやっていくしかない」と語っています。
そして、富山県と同じく、ウニの磯焼けに悩まされているのが福岡県です。宗像市鐘崎では、産学官連携の「宗像ウニプロジェクト」をスタート。ウニを育てる畜養を行っています。3カ月をひとつのサイクルとして、ウニを駆除し、エサを与え、どれくらい成長したのかを検証。陸上養殖することで商品価値を見出そうとしています。大きなこだわりは、与えるエサです。福岡を代表するうどん店「資さんうどん」もプロジェクトに参加し、だしを取った後の昆布をウニのエサとして活用しています。ほかにも、タケノコで商品にならない根の部分や廃棄処分される野菜なども使用。その結果、2022年7月から9月まで養殖したウニに実がついていることが確認できました。
一方、かつてワカメの養殖が盛んだった広島県では、違ったアプローチからこの問題に取り組もうとしています。磯焼けは、ウニが食べてしまう以外にも温暖化が一因だと言われています。そこで、専門家と漁業協同組合がタッグを組み、暖かい海でも育つワカメをつくろうとしているのです。これは、温暖な長崎のワカメの配偶体と広島のものを掛け合わせる技術で、広島市農林水産振興センターの岡本大輝技師は「地球温暖化に対応できたら、日本全国のいろんな漁業者が助かる」と語っています。掛け合わせたワカメは、広島湾で実証が始まる予定です。
また、海藻を食べる魚の「アイゴ」に注目し、取り組みを行っているのが「海のレシピプロジェクト」です。アイゴは、背びれや腹びれに毒の棘を持ち、内臓に独特の臭みがあるとして市場で値がつかない「未利用魚」に分類されています。また、海藻を食べる草食魚であるため、海水温の上昇と合わせて、著しく海藻が減少する「磯焼け」の原因のひとつと言われています。そこで、これらの海の課題においしく食べることで取り組めないかと、「#アイゴプロジェクト」を開始。第1弾では、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」と協働で「アイゴと夏野菜のサフランブイヤベース」をつくりました。さらに、第2弾では、創業114年の干物屋「やまろ渡邉」と「豊後水道のアイゴ一夜干し」を共同開発し、販売しています。
磯焼け問題に対して、全国でさまざまな試みが行われています。いつか日本発の解決策が世界の海を救うかもしれません。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトin富山県」 「海と日本プロジェクトinふくおか」 「海と日本プロジェクトin広島」
協力:富山テレビ放送株式会社 RKB毎日放送株式会社