東京・表参道スパイラル1階、スパイラルガーデンにて「海の森、海のいま展 ー海のレシピプロジェクトと新たな航海のはじまりー」が開催されています。「都会で海とつながる場所をつくろうと思い、この企画を考えた」と話すのが、イベントを主催している海のレシピプロジェクトのディレクター・青木佑子さんです。海のレシピプロジェクトは、海にまつわる“食”と“ものがたり”を通して海を伝えていくWEBメディアとして2021年秋にスタート。日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として行われています。日本財団の海洋事業部・溝垣春奈さんは「もともとアートや本が好きで、実は海が文字にもなっている、作品の中にもあると気づいた。そして、エッセイを読んでいたらシラス丼を食べたくなってスーパーに材料を買いに行ってつくったという経験から、食べることから海について楽しんで知ることができるのではないかと思い、青木さん達に相談し、プロジェクトの実現に至った」と経緯について語っています。
「海の森、海のいま展」では、海のレシピプロジェクトが見聞きし、記事にしてきた「海のいま」を展開しています。取材の中で見えてきた「磯焼け」と「未利用魚」に着目。この2つをつなぐキーワードが「アイゴ」で、そのアイゴにまつわる展示と、アイゴの旨みを引き出したスープの提供を行っています。アイゴは、背びれや腹びれに毒の棘を持ち、内臓に独特の臭みがあるとして市場で値がつかない「未利用魚」に分類されています。また、海藻を食べる草食魚であるため、海水温の上昇と合わせて、著しく海藻が減少する「磯焼け」の原因のひとつと言われています。そこで、これらの海の課題においしく食べることで取り組めないかと、全国に60店舗以上を展開する食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」と協働による「アイゴと夏野菜のサフランブイヤベース」の展開を行っています。このスープは、アイゴの旨みを凝縮した干物で出汁をとり、ソテーしたアイゴをトッピング。海藻サラダと一緒に「海の森スープセット」として、スパイラルカフェにて期間限定で提供しています。Soup Stock Tokyo 商品部 バイヤーの松尾琴美さんは「アイゴとインターネットで検索すると、“アイゴ スペース まずい”というワードが表示される。まずくても仕方なく環境のために食べてみようではなく、圧倒的なおいしさ、飲んだ瞬間においしいと思ってもらえることに、いつも以上に想いを込めて取り組んだ」とこだわりについて話します。
イベントではほかにも、海藻の研究から料理開発まで行っているシーベジタブルの友廣裕一さんや映画監督の⻑谷川友美さんといった専門家を招いてのトークセッションや、海洋プラスチックごみとペットボトルのキャップを糸状にしたものとを組み合わせたアート作品などを展示しています。溝垣さんは「食欲は誰にでもあるものなので、食欲から作品を知ったり、食欲から海を知ったりといったつながりを増やしていけたら」と語り、青木さんは「“食べる”を通して、食卓で海の課題について語り合う時間づくりのキッカケになれば。また、今後は多様の魚を使った食文化の可能性も考えていきたい」と話しています。
イベントは、2022年8月12日まで開催されています。