日本財団が推進している無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」が、プロジェクトの第1フェーズとして6つの実証実験を行い、世界初の快挙をいくつも成し遂げました。
無人運航船とは、船内のほぼ全ての作業をAIなどが担当し、無人で運航する船のことです。実現すると、人手不足などの問題の解決策となり、また、50%の船舶が無人運航船に置き換った場合、国内で年間1兆円ほどの経済効果が期待できると言います。そこで、日本財団は2020年2月に「MEGURI2040」を発足し、5つのコンソーシアムと共同で無人運航船の開発に取り組んできました。今年1月からは、実用化に向けて小型観光船から大型の旅客船まで6つの実証実験を行いました。
最初に行われたのが、神奈川県横須賀市での無人運航です。実験では、新三笠桟橋から猿島まで約1.7kmの距離を無人運航。自動で他船を避航などし、小型観光船としては世界初となる離桟から着桟までの一連の航行を自動で実施しました。三井E&S造船・事業開発部・操船システムグループの村田航課長は「センサーで相手の動きや周囲の状況を正確に把握する。その上で、実際に操船されている人のノウハウをシステムに織り込んで、自動化のシステムとして具現化している」と語っています。また、この実証実験を行ったコンソーシアムの代表である丸紅の船舶プロジェクト事業部・船舶プロジェクト第二課・担当課長・福田大輔さんは、実用化に向けてビジネス面から貢献したいと言います。「我々はMEGURI2040に唯一の商社として参加している。実証実験で技術は確立していくと思うが、実用化するにはビジネスとして成り立たせるのが大事だと思うので、総合商社としてビジネスの面からプロジェクトに貢献していきたい」と話しています。
また、小型船の実証実験は八ッ場ダムでも行われました。それが世界初となる水陸両用船による無人運航です。群馬県の八ッ場あがつま湖にて、陸上からの入水、水上での無人運航、さらには障害物の避航まで行い、入水から出水までの全ての自動化に成功しました。この無人運航船の開発に取り組んだ埼玉工業大学の渡部大志教授が「車の自動運転ソフトウエアの主要な部分が応用できた」と話しているように、システムは自動車の自動運転ソフトウエアを応用し、車両と船舶の同時制御を行うものを新たに開発したと言います。このコンソーシアムの代表であるITbookホールディングスの経営企画室長・大久保達真さんは「今、様々な技術が自動車に集まっている。それが船にも応用できるという可能性を示せた」と語っています。
そして、小型船だけでなく、大型船やコンテナ船でも実証実験が行われ、世界初となる成功を収めました。