日本財団が「廃棄漁網をアップサイクルした鞄の発表会」を2021年7月20日に行った。アップサイクルとは、廃棄物に付加価値をつけて別の製品に生まれ変わらせる新しいリサイクルの形。
世界的な課題となっている海洋ごみ問題。環境省によると、海岸に漂着したプラスチックごみの中で最も割合が大きいのが漁網となっている。そこで、日本財団は 2020年7月、企業間連携組織「アライアンス・フォー・ザ・ブルー(ALLIANCE FOR THE BLUE)」を設立し、廃棄漁網の資源化と製品開発に取り組んできた。そして、廃棄漁網を活用した鞄の製造に至ったため発表会を開催した。
鞄の製造に至るまでには、様々な企業・団体がそれぞれの特徴を生かして連携している。まず、北海道の漁師「山本漁網」が廃棄する漁網を回収。次に、リファインバース株式会社が廃棄漁網から再生ナイロン樹脂「リアミド」を生産。そして、住江織物株式会社がリアミドをもとに糸や布を制作。また、モリト株式会社がボタンなどを制作。最後に、国内一の生産量を誇る鞄の産地・兵庫県豊岡市が「豊岡鞄」に仕上げている。この鞄のこだわりのひとつが、廃棄漁網の配合率を16%から25%に抑えたこと。その理由について、日本財団の常務理事・海野光行さんは「取り扱ってくれる企業や個数をなるべく増加させて、多く流通させることで幅広い人に手にとってもらうがコンセプト」と話している。配合率を50%にもできるが、あえて配合率を抑えることで全ての事業者が無理なく関わることができ、多く流通できるようにしたという。
鞄の成果について、アライアンス・フォー・ザ・ブルー設立当初「自社で製品はつくれるが、エンドユーザーに届くような商品の開発が難しい」と話していたリファインバース株式会社の常務取締役・加志村竜彦さんは「リサイクル材から良いものができると目に見える形で感じられた」と、今までにない成果に手応えを感じているようだった。また、この鞄を普段から使用している小泉進次郎環境大臣も発表会に出席し、「海洋汚染の問題やプラスチックの問題などについて、前向きに楽しみながら取り組めるようなキッカケのひとつとして、廃棄漁網からつくられる鞄が日常になればうれしい」と話した。
この鞄は、東京駅のそばにある豊岡鞄のオフィシャルショップなどで10月1日から販売される予定。また、アライアンス・フォー・ザ・ブルーでは今後、鞄をモデルケースに文具やオフィス家具などで廃漁網のアップサイクルを進めていきたいという。