2020年の夏は、新型コロナウイルスの影響で、開設されない海水浴場やライフセーバーが常駐しない海があります。そのため、水辺の事故が増える恐れがあります。そこで、水辺の事故を防ぐために必要なことや実施している取り組みなどを専門家に聞いていきます。第2回目は、「NPO法人 海さくら」の理事長・古澤純一郎さんです。
神奈川県藤沢市にある片瀬東浜海水浴場は、新型コロナウイルスの影響で今年は開設しておらず、海の家も営業していません。ところが、ひとつだけ海の家が建っています。この海の家は、日本財団とNPO法人 海さくらが2017年から毎年建設している「釘のない海の家」です。「僕たちは江ノ島で2005年からごみ拾いをしているが、ごみを拾っている時に釘がたくさん出てきた」と古澤さんが話しているように、かつての片瀬東浜は、海の家の解体後、浜に多くの釘が取り残されていて危険だったそうです。そこで、他の海の家や全国の浜への安心・安全な浜づくりの手本になるように、また「浜から釘が減ってほしい」という願いを込めて、釘を一本も使用しない「釘のない海の家」が建てられたのです。
ただ、今年は海水浴場が開設されないため建設しない予定でした。しかし、古澤さんは「藤沢市から釘のない海の家を建てて欲しいと要請があった」と言います。その理由は、海岸が無法地帯化する恐れがあるためです。片瀬東浜では自己責任で海水浴ができます。実際に、海水浴をしに訪れた人もいて、「夏といったら海なので来たくなってしまう」、「海水浴場が開設されていないのは知っていたが、天気のニュースとかで江ノ島が映ると、人がいるなと思って」と話しています。また、海水浴でなくても、多くの海岸利用者が訪れるだろうとも懸念されていました。そのため、監視する人がいない状態では海岸が無法地帯になる可能性があり、藤沢市はライフセーバーを派遣することにしました。そして、「日本財団と相談して、浜を安心・安全に保つために建てようと決定した」と古澤さんがその経緯を語っているように、ライフセーバーの待機場として、釘のない海の家は今年も建てられたのです。ちなみに、ライフセーバーは、8月31日まで毎日、午前10時~午後3時まで駐在しています。
そんな釘のない海の家について、古澤さんは「ライフセーバーはすごい喜んでくれている。間伐材でつくられているからとても心地がいいし、便利だと言ってくれている」と胸を張ります。実は、海の安全を守るための重要な拠点として様々な工夫が施されているのです。例えば、ライフセーバーが監視しやすいように床が高くなっていたり、救護所に砂が入らないようにもなっています。これらの工夫は年々進化させていて、今年はジェットスキーやバギーが入るようにしたそうです。
ただ、釘のない海の家があり、ライフセーバーが常駐しているとはいえ、今年の片瀬東浜は例年とは違って万全の安全体制ではありません。そのため、海へ行くのを控えたり、自分たちで対策をするのが重要なのではないでしょうか。