新潟県の鯨波海水浴場は、かつて多くの人で賑わった日本海側初の海水浴場です。しかし、「70軒ぐらい宿泊に関わる事業があったが、今は数えるほどになっている」と、小竹屋旅館の代表でオーサムビーチアーキテクトの栃堀耕一さんは語ります。
そこで、栃堀さんは、生まれ育った海を盛り上げるべく、海のサイダー「鯨泉」を開発・販売したり、浜辺のシーサイドBBQテラスをつくったり、さらに、近年では、秋の海を楽しむ「ビーチピクニック」を開催するなど、旅館経営の傍ら、鯨波の海にある新たな価値を見つけ、これまでになかった様々なサービスをつくり出しています。そのキッカケは「大人になって帰ってきて、見たりとか遊んだりした結果、この場所が持っている色んな価値にだんだん気づいてきた」からだと言います。
そんな中、2019年から始めた新サービスが、サンドライダーの導入です。これは大きなタイヤによりビーチを簡単に移動でき、さらに、そのタイヤが浮き輪の役割をすることで、海に浮くことが出来ます。そのため、砂浜からそのまま海に入れるビーチ用の車椅子となっているのです。「障害のある人がビーチで過ごしたり楽しんだりする価値は、健常者と違うところにあるのではないかと。そういう風に思ったのがサンドライダーを導入した最初のキッカケ」と栃堀さんは言います。実際に体験した子どもは「サンドライダーだと海とかも入れるから、すごく楽しかった」と語っています。栃堀さんは「進行性の病気は、子どもの頃に出来たことがだんだん出来なくなっていく。サンドライダーを体験した家族は、車椅子に乗っている子どもと一緒に海に入れるなんて夢にも思っていなかったと喜んでくれている」とサンドライダーの成果を話しています。
今後について栃堀さんは、障害のある人も健常者も誰でも楽しめるビーチを「ビーチウェルネス」という言葉で表現し、形にしようとしています。「『誰でもそれぞれの人生を豊かにできる』ビーチにはそういう力があると思っているので、多様な楽しみ方をしてもらえるといいなと思っている」と栃堀さんは語っています。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトin新潟」
協力:株式会社新潟放送