海ごみ

麦ストローが広げる脱プラの輪~1人の女性の海への想いから石川県小松市で生まれた大麦ストロー~

最近、世界中で問題となっている海洋プラスチックごみ。街にポイ捨てされたペットボトルやレジ袋、プラスチックのストローなどは、川から海へ流れていきます。世界の海に流出するプラスチックごみは、なんと毎年800万トンにも及ぶと言います。そんな中、石川県から脱プラスチックの動きが広がっています。

■人気ホテルで使われている大麦ストロー
トリップアドバイザーが発表した「トラベラーズチョイスホテルアワード2019」のサービス部門で1位になるなど、観光客からの人気が高い「金沢彩の庭ホテル」。このホテルのレストランの飲み物コーナーに置かれているのが、大麦ストローです。金沢彩の庭ホテルの支配人・本郷一郎さんは「まず、最近、環境保護ということで、プラスチックごみを無くそうと。そんな中で、プラスチックのストローを自然でつくったものに変えたいと思っていたところ、大麦のストローを目にしました。また、飲み物でも県内産の大麦の麦茶を探しました。そして、一緒に出すことで食文化の発信にも繋がると思い、その2つの点で大麦のストローを使わせて頂いています」と言います。

■海を守るため大麦ストローを企画した蒲田さん
そんな大麦ストローを企画したのが、ロータスコンセプトの蒲田ちかさん。「ウミガメの鼻に、プラスチックのストローが刺さっている動画を観まして、海が汚れるのが許せませんでした。あと、子どもにずっと美しい海を残したいと思って。そんな時、『小松市に大麦がある。あの茎だったらストローが出来るかもしれない』と聞いたのが大麦ストローを知ったきっかけです」と蒲田さんは言います。また、「土から生まれ、土に還る」ことに意味があると思い、紙ストローではなく大麦ストローに着目し、本格生産を2019年5月下旬から始めました。

■蒲田さんの海への想いが製造の輪を広げる
その材料を提供してくれたのが、小松市の嵐農産です。そんなストローの材料は、通常は細かく刻んで畑の肥やしにする大麦の茎を長い状態で残したものです。この大麦は、海を守りたいという蒲田さんの強い思いに共感し、嵐農産がなんと無料で提供してくれることになりました。その大麦は、2週間ほど乾燥させます。

その後、茎をカットして皮をむくのは、こまつ育成会に入所している人達です。社会福祉法人こまつ育成会サービスセンターあしだの北濃松喜所長は「安宅海岸でクリーン・ビーチという海をキレイにする作業があって、そこで、プラスチックごみがたくさんあることに我々も気付いたわけです。うちの製品も作業も『環境にやさしい』が目標ですので、大麦ストローの製造はそこにちょうど結びつきました」と、携わったキッカケを語っています。その後、こまつ育成会を中心とした就労支援施設にて煮沸消毒、そして、乾燥をさせて完成です。

完成した大麦ストローは、2019年7月から販売が開始されました。「やっぱりひとりでは出来ないので、小松の地域の方であったり、デザイナーさんであったり、箱屋さんであったり、色んな方が携わって、ひとつのものが出来ました」と蒲田さんは言います。

■石川県だけではなく東京などでも販売
そんな大麦ストローは、今、蒲田さんの海を守りたいという思いと共に広がり、金沢彩の庭ホテル以外でも使われ始めています。その1つが、奥能登の美しい海が見下ろせる「つばき茶屋」。大麦ストローは長さがバラバラですが、短いものも活用するため、このお店では小さいドリンクも提供し始めました。さらに、大麦ストローを使っている理由をお客さんに伝えてもいます。お店で働く番匠さとみさんは「昔から海のそばで育っているので、ごみが増えてきているのも見ていて、ごみを減らすためにちょっとでも出来ることがあったらいいなと思っていて。そんな時に、同じ想いの人達がテレビで観て、自分が出来ることから始めようというのがキッカケです」と大麦ストローを使い始めた理由を語っています。

さらに石川県だけでなく、日本橋にあるセレクトショップ「エシカルペイフォワード」など東京都、さらには、愛知県や富山県でも流通していて、今では、10カ所以上で取り扱われています。

■大麦ストローを地球中に広げたい
蒲田さんは「脱プラスチックという動きで、ストローというのはプラスチックの中でも小さなアイテムです。でも、小さなアイテムを変えられないと、その背景にある大きなプラスチックの問題には対抗できないと思います」と言います。実はプラスチックのストローは、海洋プラスチックごみのわずか0.03%程度です。しかし、蒲田さんは「たとえ小さな取り組みでも、なんとかして海を守りたい」という想いを込めた大麦ストローを、さらに広げていきたいと言います。「海外展開も最初から視野に入れていましたので、例えば、海外から来られた方が、大麦ストローを買って自分の国に持って帰るというように、地球中へ飛んだらいいなと思っています」。

素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinいしかわ」
協力:石川テレビ放送株式会社

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