兵庫県・坂越で毎年10月に行われているのが、「坂越の船祭」。赤穂市の南に位置する坂越は、昔から港町として栄え、海が身近にある街。そんな坂越で行われるこのお祭りは、大避神社に祭られている御祭神・秦河勝が坂越に渡来した伝承を再現するお祭りとして始まったという。その歴史は古く、なんと300年以上前から行われてきた。その伝統と地域の特色が見られることなどから国の重要無形民俗文化財にも指定。また、瀬戸内海三大船祭のひとつともされている。そのため、坂越の人にとって、このお祭りは一大イベント。坂越の船渡御祭保存会の会長・篠原明さんは、「地域住民にとっては待ちに待った祭りです」と話す。
そんな坂越の船祭は、御祭神・秦河勝に縁のある生島へと船で神輿を運ぶ。その神輿を船に乗せる際に、大盛況となるイベントが行われる。それが、「バタかけ」。これは、地域の青年によって行われ、船にバタ板7枚を渡す際、踊りや餅まきなどを披露するもの。
大盛り上がりとなったバタかけの後は、生島に船で神輿を運び、神事が行われる。生島には秦河勝の墓所があるため、年に1度この日だけ立ち入りが許されるのだ。
その後、夜になると、神輿を乗せた船が浜に戻ってくる。そして、大避神社に神輿が宮入りしてお祭りは終わる。
しかし、そんな伝統あるお祭りだが、地域の子どもが減っているため、存続が心配されているという。そこで、お祭りを守るため、街を出て行った人達もこの祭りの日には帰ってくるそう。篠原さんは、「いかに維持するかという祭りでもあるわけです。国の重要無形民俗文化財ですから残していかないといけないと思っています」と語る。
海と共に生きてきた坂越の人々。
その象徴のひとつである船祭りは、後世に残したいという想いと共に今も大切に行われている。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinひょうご」
協力:株式会社サンテレビジョン