●スーパーやドラッグストアなどの売り場を支える「ラウンダー」とは?
スーパーやドラッグストアにずらりと並ぶ商品。普段、何げなく見ている売り場ですが、実は「どの商品を、どこに置くのか」には、さまざまな工夫が凝らされています。商品の向きをそろえたり、奥にある商品を前に出したり。売り場をメンテナンスするだけでなく、店舗への商品案内なども行い、より良い売り場づくりを支えているのが「ラウンダー」と呼ばれる人たちです。では、ラウンダーは売り場でどんな役割を果たしているのでしょうか。インパクトホールディングスグループでは、年間94万件のラウンダー業務を手がけています。今回は、自身もメーカーのラウンダーを経験し、業界歴約20年というインパクトフィールド株式会社 シニアマネージャーの木屋村将人さんに、知られざるラウンダーの仕事について聞きました。
●スーパーなどの商品陳列には理由がある!「ゴールデンゾーン」とラウンダーの売り場づくり
商品棚には、お客さんの目につきやすいとされる場所があります。木屋村さんが教えてくれたのが、「ゴールデンゾーン」と呼ばれるエリアです。「一般的な男性、女性で見ると、顔の下から腰の高さぐらいまでが、ぱっと見た時に視界に入るので、ゴールデンゾーンと言われるところ。やはり一番下になると、棚から近づくと商品がほぼ隠れてしまうため、お客様の目につきにくい場所」と語るように、ラウンダーは、こうした場所に商品を置いてもらえるよう店舗側と交渉することもあるといいます。ただし、「良い場所」はすべての商品で同じとは限りません。売り場には季節ごとに商品の配置を決める「棚割り」があり、商品カテゴリーによっても適した置き場所は変わります。木屋村さんによると、例えばパンの場合、食パンは下の段、菓子パンは上の段が良いとされるケースもあるのだそう。「お客様の目につくかどうか、手に取っていただきやすいかどうかというのを、ラウンダーも店舗を訪問した時にいろいろと試行錯誤しながら、お店の方とコミュニケーションをしながらやっています」
私たちが普段目にしている商品棚。その裏側では、商品の特徴や見え方、手に取りやすさまで考えながら、売り場づくりが行われているのです。
●人手不足だけではない。本部で決めた売り場が「すべての店舗で実現できない」ワケ
そもそも、なぜメーカーや小売り店の本部だけではなく、ラウンダーという存在が必要なのでしょうか。木屋村さんによると、本来どのような売り場にするかは、メーカーと流通小売り側の商談などで決められているといいます。卸売業者を通じて商品が店舗へ届けられ、流通本部から各店舗へ「この売り場にしてください」という指示が出されます。しかし、その指示がすべての店舗で実行されるとは限りません。「普段の業務に加え、さらに膨大な情報量の中から、特定の商品の情報だけをピックアップするというのはなかなか難しい。全ての店舗でそれが実行できないという現実もあります」
背景にあるのが、店舗の人手不足と情報量の多さです。例えばドラッグストアでは、オーラルケアだけでなく、化粧品やシャンプーなどさまざまなカテゴリーがあり、それぞれに複数のメーカーの商品があります。「いろんなカテゴリーがあって、いろんなメーカーさんがいる。それだけ多くの指示が来るので、少ない人数でやりながら、その情報を拾い上げて、しっかり売り場に形づくるというのはなかなか難しい」と木屋村さんは課題を語ります。そこでラウンダーが店舗を訪問。メーカーや本部が考えた施策を、実際の売り場へと落とし込んでいきます。つまりラウンダーは、単に人手を補うだけではなく、メーカーや本部で決められた施策と、実際の売り場との間にある“最後の距離”を埋める役割も担っているのです。
●ラウンダーはメーカーと店舗の橋渡し役|売り場で探る双方の「着地点」
ラウンダーの仕事は、依頼を受けたメーカーの商品を、とにかく目立たせればいいというものでもありません。基本的にはその商品をより多くの人に知ってもらい、手に取ってもらえるよう活動します。一方で、売り場には店舗側の事情もあります。「(メーカー側の意向を)あまり強くし過ぎると、逆にお店の方から『ちょっと出しゃばりすぎじゃない?』みたいに言われることもある」
だからこそ、大切になるのが店舗スタッフとのコミュニケーションです。「お店の方との会話の中で、着地点をしっかりと作っていくというのも、ラウンダーの活動の中のひとつではあります」と木屋村さんが説明するように、メーカーの意図を受け取りながら、店舗側の事情にも耳を傾ける。その間に立ち、双方が納得できる形でより良い売り場をつくっていくことも、ラウンダーが求められる理由です。
●「データでは得られない生の声」をメーカーへ|ラウンダーが担うもうひとつの役割
そしてラウンダーには、もうひとつ重要な役割があります。メーカーから店舗へ情報を届けるだけでなく、店舗で得た情報をメーカーへ持ち帰ることです。メーカーにとって、実際にそれぞれの店舗がどのような状況になっているのかを把握するのは簡単ではありません。一方、店舗スタッフは日々、買い物客と接しています。「お店の方は、お客様と直接相対していろんな情報を聞きますので、なかなかデータでは得られない生の声というのをお持ちです」。そこでラウンダーが店舗を訪問した際に話を聞き、その情報をメーカーへフィードバックします。木屋村さんは、それによって「よりリアルな課題」が見つかり、次の改善策にも着手しやすくなると話します。メーカーから店舗へ施策を届けるだけではなく、店舗からメーカーへ現場の情報を返す。ラウンダーは、売り場を介した双方向の橋渡し役でもあるのです。
●AI時代にも「人でなければならない」|メーカー・店舗・ユーザーをつなぐ仕事
データ活用やAIが急速に進んでいる現在。それでも木屋村さんは、リアルな売り場には「人」でなければ担えない部分が残ると考えています。「IT・AIの時代と言われていますけども、やはり人でなければならない、ラウンダーでなければならないという部分で、そこの課題を潰していけるのかなと思っています」
店舗スタッフと直接話し、その店ならではの事情をくみ取る。メーカー側の意図との間に着地点をつくり、現場で聞いた生の声を再びメーカーへ届ける。こうした人と人とのやり取りは、データだけでは拾いきれないものです。木屋村さんは、ラウンダーという仕事の意義について、依頼をするメーカー、その商品を扱う小売り店、そして実際に商品を手に取る一般消費者という「3者」が、それぞれ満足できることだと話します。
メーカーと店舗、そしてユーザーをつないでいくラウンダー。人手不足やECの台頭など、リアル店舗を取り巻く環境が変わる中、その売り場を現場で支える「人」の役割は、これからも重要になっていきそうです。
一方、インパクトホールディングスグループでは、「人」だけでなくデジタルの力を活用した売り場づくりも進めています。
※動画内にはAIで生成したイメージ映像を複数使用しています。





