地球温暖化が叫ばれ続けている今、二酸化炭素の吸収方法として注目されているのが「ブルーカーボン」です。ブルーカーボンとは、海藻(海草)や植物プランクトンなどが行う光合成により、海水に溶け込んだ二酸化炭素が吸収されることによって、海洋生態系に貯められた炭素のこと。そんな中、海藻(草)が生い茂る場所「藻場」に関する取り組みが各地で行われています。
愛媛県で行われているのが「今治アマモプロジェクト」。海草「アマモ」がたくさん生えている場所「アマモ場」を再生させようという取り組みを行っています。「アマモ場」は、かつては日本の沿岸で多く見られましたが、高度成長期の沿岸域の埋め立てなどによって大幅に減少。特に瀬戸内海では、1960年から1990年の間に約7割が姿を消しました。2022年から活動を開始している今治アマモプロジェクトでは、こども達も参加し、海で採取したアマモの種をポットに植えて発芽させ、苗の生育状況を観察。また、自然に帰る素材のガーゼに種と土を包み、海水が引き込まれている今治城のお堀に入れてアマモ場ができるか検証しました。しかし、採取した1万粒の6割ほどが発芽したものの、アマモ場の形成には至りませんでした。そこで、2023年はおよそ5万粒を採取し、さらなる検証を行っています。今後について、プロジェクトを主催しているNPO法人 今治シビックプライドセンターの三谷秀樹さんは「一気に広がる事業ではないので、継続して行っていき、参加しているこどもと一緒に育っていければと思う」と語っています。
一方で、香川県にある香川大学では、人工物を使った藻場づくりに取り組んでいます。それが「人工藻場造成構成物」を使った研究。これは藻場を生やすために設計した人工漁礁で、自然のエネルギーである潮の流れをコントロールできるように設計しました。人工的に藻場をつくるのは難しいと言われている中、高松市沖に「人工藻場造成構成物」を設置した結果、12年間で藻場の成長のサイクルができ、魚やタコなどが棲みつくという成果が出ています。香川大学・創造工学部長の末永慶寛教授は「藻場を増やすために、何でもかんでも海に入れればいいわけではなくて、自然のエネルギーである潮の流れをうまく利用することで、エコな藻場のつくり方を目指している」と述べています。
そして、鳥取県では、ムラサキウニを駆除する取り組みを実施。鳥取市青谷町では海藻を食べるムラサキウニが大量繁殖し、藻場が減少・消滅する「磯焼け」が起こっているのです。そこで、鳥取県内の漁業者が、磯焼け対策として集中駆除を実施。100平方メートルの区画内のウニを繰り返し駆除することで、区画内のウニの数と海藻が再生したかを確認するものです。この駆除には、鳥取県立青谷高校の生徒も、青谷地域について学習する「青谷学(あおやがく)」の一環として参加しています。この日は、ウニの数にどのような変化があったのかを確認。すると、集中駆除を行っているエリアには、ウニが少なくなっていたり、海藻が蘇りつつあったりしているようです。鳥取県漁協の古田晋平さんは「(ムラサキウニは)確実に減っている。私自身は全国的にもこのような調査は見たことないから、やってみようとなった」と話します。生徒は「海藻が増えてよかった」、「地域に貢献できてうれしい」と手応えが感じられたよう。
海の環境問題をどのように解決するのか、各地の取り組みに期待が寄せられています。
素材提供:日本財団「海と日本プロジェクトinえひめ」 「海と日本プロジェクトinかがわ」 「海と日本プロジェクトinとっとり」
協力:南海放送 西日本放送 日本海テレビジョン放送