11月1日の「灯台記念日」から11月8日までの期間、日本財団と海上保安庁が推進している「海と灯台ウィーク」。そのメインイベントとして、都内で「海と灯台サミット2023」が11月4日に開催されました(主催:一般社団法人海洋文化創造フォーラム 共催:日本財団「海と日本プロジェクト」)。日本には3000を超える灯台がありますが、海の道標としてだけでなく、その歴史的・文化的価値に基づく可能性が広がっています。そこで、灯台の存在意義や利活用について考え、さまざまな施策を実施しているのが、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として活動している「海と灯台プロジェクト」です。サミット会場には、同プロジェクトに参画する自治体や団体に加え、灯台に関心を持つ一般の方、約200名が集いました。
午前中に行われたシンポジウムでは、日本財団の笹川陽平会長と海上保安庁の石井昌平長官によるビデオメッセージからスタート。笹川会長は「会場には、灯台について詳しい方も、あまり知らない方もいると思うが、ぜひこの機会にもっと灯台のことを知って欲しい」と語り、石井長官は「シンポジウムで灯台の新たな魅力が見いだされ、灯台の利活用の可能性を発見するキッカケのひとつになれば」と期待を寄せました。その後、9名の有識者が登壇し、3つのテーマによるトークセッションと講演が行われました。まず、「灯台を巡る体験価値」というテーマでは、モーターマガジン社の岩瀬孝昌さんが「バイク乗りは常に行先を探している。昔、灯台を管理していた方々を“灯台守”と呼んだ。そこで、バイクで灯台まで走りに行く人を“灯台乗り”と名付け、この言葉と灯台へのバイク旅を流行らせたい」と「灯台×バイク」の企画を提案。また、「灯台というロケーション価値」というテーマでは、漫画家でキャンプコーディネーターのこいしゆうかさんが「灯台はキャンプとの相性がバツグン」と話し、「灯台×キャンプ」の楽しみ方や展開について、自作のイラストとともに語りました。3つ目の「灯台に宿泊するという体験価値」では、OUTDOOR TRIP株式会社の南畑義明さんが「和歌山県の潮岬灯台の横にある灯台守が住んでいた官舎をホテルにする計画を進めている」と説明。それに対して、株式会社BLANCの安部孝之さんは「今、お客さんが旅に求めているのは非日常。灯台はすごく非日常感のある場所だと思うので、そこでの宿泊体験ができるのは魅力的だと思う」と話すなど、有識者たちが各々の視点から提言を行い、語り合いました。
シンポジウムの最後には、日本財団の海野光行常務理事が、「海と灯台プロジェクト」の取り組みのひとつである「新たな灯台利活用モデル事業」を紹介。この事業は、灯台のさまざまな利活用モデルを創出することを目的に、調査や施設整備などに取り組む団体を支援するもので、2年目となる今年度は11の地域で実施されています。海野常務は取り組みのひとつとして、愛知県の野間埼灯台で行われた“現代版の灯台守”というキャッチコピーで専任スタッフを募集した取り組みを紹介。そのほかにもモデル事業は、富山県の「生地鼻(いくじばな)灯台」で「灯台ナイトマーケット」が開催されるなど、各地で灯台を活かした色々な取り組みが行われています。
午後には情報交換会、テレビ番組の公開収録が行われ、幕を閉じた「海と灯台サミット2023」。灯台の今後について、海野常務理事は「一般の方には、新しい取り組みを見てもらい、実際に灯台に行ってみるといったアクションをまずは起こして欲しい。自治体や事業者には、他の事例を把握してもらい、今回のシンポジウムでは異分野の方々の発表や意見もあったので、それをどういう形で咀嚼して実現・具現化していくのかを検討して欲しい」と展望を語っています。