●能登半島地震の影響を可視化!最新の海底地形データを発表
「海の地図PROJECT」が、能登半島地震と豪雨災害の前後での海底地形データの変化について、2025年1月31日に発表しました。日本財団と日本水路協会が推進する「海の地図PROJECT」は、航空機からレーザーを発射して測量する最新技術を使い、海岸線の浅い海域(水深0~20m)を地図化しています。日本水路協会の加藤幸弘常務理事は「航空機を使うことで船舶に比べて90倍のスピードでの測量ができ、非常に効率的で高品質なデータが得られる」と説明しました。
●最大5.2mの地盤変動!震災後の能登半島の地形変化とは?
この日、海の地図PROJECTが発表したことのひとつが、能登半島地震による地形の変化です。震災前に測量を終えていた地点で、2024年4、5月に同じ調査を行ったところ、垂直方向に最大5.2mの隆起が発生、水平方向にも最大で4.3mもの移動が観測されました。それらの地形の変化によって、輪島市の門前黒島地区の沿岸では、幅200m前後の陸地が出現。さらに、海底の堆積物が移動したことで、これまで砂地だったところに新たな岩礁もできていました。大きな地殻変動を伴う地震の前後で、こうした海岸線付近の詳細な地形データを取得できたのは、世界でも初めてのケースだと言います。日本財団の海野光行常務理事は「能登半島の復興に欠かせない基礎データとしての活用に大きな期待ができる」と述べています。
●専門家が解説!能登半島の海底変化が防災・生態系・漁業に与える影響
記者会見では こうしたデータの活用法について、各分野の専門家らがディスカッションを行いました。登壇した神戸大学 海洋底探査センターの巽好幸客員教授は「地震が起こる前後での地殻変動を海と陸とでシームレスに取れた世界初のデータだと思うので、これが取得できたのが素晴らしい。こういったデータは津波のシミュレーションを行うのに非常に重要で、積み重ねていくことで精度があがり、防災・減災につながると考えている」、東京大学 大気海洋研究所の木村伸吾教授は「沿岸の地形がきちんとわかることで、沿岸生態系の理解が格段に進む」、わじま海藻ラボの石川竜子代表は「(堆積物の移動で)つぶれてしまう漁場もあるが、新しくできた岩礁などに新たな藻場ができるのであれば、それは希望が持てる話だと思う」と話すなど、詳細な海の地図が完成すれば、さまざまな分野で海の課題解決が進むという期待の声があがっていました。
2022年にスタートした海の地図PROJECTは、現時点で日本の総海岸線の25%まで地図化が進んでいるそうで、2032年までには90%にまで伸ばしていく目標を掲げています。