日本財団、全漁連(全国漁業協同組合連合会)、東京大学大気海洋研究所による「海洋環境変化対応プロジェクト」が本格的にスタートすると、2025年1月20日に発表されました。
いま日本近海では、海水温の上昇や魚の生息域が移動するといった海洋環境の劇的な変化が起こっています。その変化に現場の漁業者も危機感を抱いていて、全漁連の三浦秀樹常務理事は「漁獲量も大幅に減少している。例えば、サケの漁獲がものすごい勢いで減っていて、スルメイカは12分の1ぐらいに減っている」と言います。また、鹿児島県で定置網漁を行う漁師で全国漁青連の顧問も務める川畑友和さんは「鹿児島県では、アジが激減している。一方で、今年だけマサバの漁獲がすごく多い。薩摩半島の南の方はほとんどサバだらけで、値段も安いし労力もかかっているという問題に直面している」と嘆いています。こうした中、海の変化の実態を把握し、広く社会にその現状を伝え、有効な対応策を見出すことを目的に、日本財団、全漁連、東京大学大気海洋研究所が「海洋環境変化対応プロジェクト」を設立しました。
この日は、プロジェクトの本格始動とその内容を発表。日本財団の笹川陽平会長が「しっかりとしたモニタリングをすることによって、日本の水産物の管理をやってもらう」と説明したように、日本全国の若手漁業者が最新の機器を使って海水温などのデータを継続して収集、そのデータを研究者が分析し、対応策などを検討していくもので、日本財団によると、漁業者と研究者が協力して海洋環境の変化に取り組むのは全国でも初めてとのことです。すでに12道府県13の地点でデータ収集が進められていて、この記者発表会では、沖縄県で起こっているサンゴの白化現象や瀬戸内海で足のないタコの報告が相次いでいることなどが紹介されました。東京大学大気海洋研究所の兵藤晋所長は「まずは一番基本的な水温から。そこに加えて塩分濃度のデータをとっていく。水温と塩分は生き物にとって必要不可欠なものなのでそのデータをとることが大事。また、漁業者の皆さんにお願いするため、長期的に労力をかけずにできることを考えると、その2つから始めたい」と話しています。
今後は収集する地点や調査項目を増やしていく予定で、日本財団の海野光行常務理事は「まず何が起こっているかをモニタリングでしっかり把握をする。その上で何が必要かというとフィードバック。例えば、カキがとれなくなるとなった場合に、養殖の仕方をどう変えるか。これの提示まで踏み込んでやっていきたい」と展望を語っています。