実は今、灯台が危機的な状況にあるという。灯台を訪れる人は、1973年は約178万人だったが、2018年は70万人ほどと半分以下にまで減少。また、灯台の基数も、2003年のピークを境に減り続けている。海上保安庁の次長・上原淳さんは「航行の安全装置オンリーで灯台を定義してきたのが、減少の要因のひとつ」と語る。航海のための安全装置としての役割が終わりつつあるというのだ。
そんな中、2019年12月10日に開催されたのが、「全国灯台文化価値創造フォーラム」。これは、日本財団が推進する「海と日本プロジェクト」の一環として実施。灯台のある全国の自治体が集まり、地域資産として“灯台の利活用”を促進することが目的で、すでに行われている取り組みの学習や情報交換などが実施された。そのひとつが、「恋する灯台プロジェクト」。このプロジェクトは、一般社団法人日本ロマンチスト協会と日本財団が共同で行っているもので、日本全国の灯台から、ロマンスの聖地にふさわしい灯台を「恋する灯台」として、灯台がある地域を「恋する灯台のまち」として認定し、地域の観光資源として灯台の価値を見直すというもの。フォーラムでは、「恋する灯台」の仕掛け花火を打ち上げるなど、様々な取り組みを行っている新潟県の「能生港灯台」など、3カ所が紹介された。
さらに、フォーラムでは、今後、灯台の利活用として、エンタメの分野での取り組みも行われることが発表された。それが、「灯台×マンガ・アニメ」。これは、スタジオジブリ・宮崎駿監督に師事した糸曽賢志さんが企画中のプロジェクト。日本全国にある灯台をイケメンに擬人化し、ストーリーをつくる。そして、そのマンガ・アニメを通して、灯台に触れてもらおうというもの。現在、LINEマンガでの実施に向けて進めているという。糸曽さんは「灯台文化の価値創造をマンガやデジタルアートから応援し、ムーブメントを起こしていきたい」と語っている。
そして、日本財団も新たなプロジェクトを実施すると発表。それが、「Blue Coastline Japan」(※発表時点での仮名称)。これは、ニーズの調査や政策提言、全国で行われている取り組みの集約など、灯台の利活用にまつわる新しいプラットフォームを「海と日本プロジェクト」の中につくるというもの。日本財団の常務理事・海野光行さんは「ひとつのプラットフォームをつくり連携して盛り上げていく、また、灯台を通じて紡ぎだされる海と人との関わりを紐解いて、海洋体験のコンテンツとして磨き上げていくことが大事だと思う」と語った。