日本財団は、新型コロナウイルス対策として救命救急医療の支援を行うと、2020年5月26日に発表した。支援対象は全国に139ある「救急指導医指定施設」。その目的について日本財団の常務理事・海野光行さんは「今そこにある危機への対応として“新型コロナ対策への支援”を行い、次に起こる危機への備えとして“第2波、第3波の新型コロナへの備え”と“甚大な複合災害への備え”」だと話す。
5月25日に緊急事態宣言は解除されたが、いまだ新型コロナウイルス問題は収束していない。そんな中、今、救命救急医療が危機的な状態だという。その要因のひとつが、感染症対策における器材などの不足。実際に、淀川キリスト教病院・救急科・副部長の夏川知輝医師は「とにかく僕ら自身を守るものさえ不足している。正直怖い」と語っている。また、医師や看護師は新型コロナウイルスの対応により、肉体的にも精神的にも疲弊しているという。その状況下で救急医療が新型コロナ対応に追われると、他の重篤患者を診られなくなるなど危機的な状況に陥る。そして、新型コロナが収束していない状況で、さらに自然災害が発生した場合、甚大な被害をもたらす恐れがある。実際に、コロナ禍で南海トラフ大地震が発生した場合、避難所における感染者数は、約1カ月で最大60万人にもなるという推計もある(出典:株式会社Spectee 2020年5月)。
そこで、日本財団は、生命の危機にある状態の患者を最初に診断する救急医療を支援するのだという。支援内容は、2020年度は防護着やドクターカーなどの購入費といった資金支援を実施。まず6月中に先行して4つの救急指導医指定施設へ開始し、その後、7月から他の施設へも資金支援を始める予定だという(6月中に施設からの申請を受付)。器材などの提供ではなく、資金支援の理由について海野さんは「支援はニーズに基づき、柔軟かつスピード感をもって行う。ものだと時間がかかってしまう」と話している。そして、2021年度からは救急医療に従事する人材の育成などを実施する。支援の総規模は3年で50億円以上と、日本財団による新型コロナ対策支援の中でも最も大きいものになるという。海野さんは「救急医療が新型コロナの影響で機能不全を起こしているが、その原因はリソースの不足があったと思う。このリソースの不足を日本財団が注入して改善し、第二波や第三波、そして複合災害に備える。そうすることで、救急医療を後押ししたい」と話す。また、日本財団の会長・笹川陽平さんは「救急医療の医師や看護師には、これから環境が良くなる可能性があると思って欲しい」と支援への思いを語っている。